これまでの厳しい暑さで、ことしは、海の水温も高くなっているそうです。瀬戸内海の中は、どうなっているのでしょうか?RCCのカメラがのぞいてきました。

江田島市沖の海中ですこの日の気温は36度。海の透明度は高く水温は28度でした。この時期は、春に生まれた小さな魚たちが成長し、群れになって浅瀬でエサを食べるなど、さまざまな生き物が活発に活動する様子を観察することができます。

水面近くにいるこの群れは、アオリイカです。小魚たちを狙っているようです。こちらイカは大きな魚を捕まえていました。

岩の一センチほどの穴からかわいい顔を覗かせているのはコケギンポ。頭の上にある木の枝のようなものは、皮弁と呼ばれます。何のためにあるのかはよくわかっていないそうです。

仕掛けから外れてしまったタコつぼを覗いてみると…、マダコが卵を守っていました。呼吸をしながら、海水で卵をゆらすと…卵から体長2ミリほどの赤ちゃんが次々に生まれていました。宮島水族館の飼育員、田守泰裕さんによりますと、タコの産卵時期は6月から8月まで…。ふ化するまでは、1か月ほどかかるそうです。メスは、巣からでることなく外敵から卵を守り続けます。すべての卵のふ化が終わると、親のタコは力尽き、死んでしまうそうです。

「温泉に来たみたい」例年と比べて海水温は

この夏、瀬戸内海の海水温は、例年とくらべると特に水面近くで2~3度ほど高くなっています。猛暑日が続いたことや台風の到来による海水のかき混ぜが少ないことが原因と言われています。

ダイビングインストラクター 前田晃子さん
「(夏に)水面の温度がはじめて30度になったことがあったので例年より暑いです。温泉にきたような感じ」

こちらはウミウチワです。その先にはスミゾメミノウミウシが卵を産みつけていました。この海域に20年近く潜ってきた前田さんは、海の環境も少しづつ変わってきていると話します。

ダイビングインストラクター 前田晃子さん
「ウミウチワがすごい増えていて、前は2箇所くらいしかなかった。今は小さいのから大きいのまでたくさん見れます」

近年の海中の環境や生態の変化の原因は、夏の高い水温以上に、地球温暖化による影響が大きいとも言われています。

広島大学・統合生命科学研究科 坂井陽一 教授
「夏場や秋口に南の魚が一時的に入り込んだりするのはよくあること。問題は、実は冬なんです。(地球温暖化によって)冬場の水温が上がることによって、今まで冬越しができなかった魚たちが広島湾、安芸灘で生存ができるようになり、その魚たちが繁殖活動まで行うようになると、古くから存在していた冷たい水を好む魚たちが人知れず消えてしまう」

環境の変化を受け入れチャンスと捉えることも大事

環境省によりますと、瀬戸内海の年間の海水温の平均はおよそ40年前にくらべ1度以上、あがっています。

坂井教授は、地球温暖化をマイナスととらえるだけではなく、プラスにも変えることができるのではないかと話します。

広島大学・統合生命科学研究科 坂井陽一 教授
「温暖化をこれ以上のペースで進めないようにする努力は当然行われるべきです。ただし、それを行ったとしても、この温暖化は止めることはできない。環境の変化を受け入れて、その中でしたたかに海と一緒に人間が生きていくためにどういうことができるか。ハタ類(クエ・マハタ)がおそらく増えてくるだろうと予想されます。新しい水産資源として利用するような、ある意味チャンスに捉えてですね、積極的に考えていくというアプローチが大事になるかなと思います。」

瀬戸内海の南部愛媛県では、30年前から高級魚であるクエ・マハタ養殖しています。水温が高い海水による養殖で、魚の早い成長がみこめるとしています。瀬戸内海の水温は今月末から冬にむけてじょじょに下がりはじめます。

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青山高治 キャスター
坂井教授の話では海の環境の変化は、研究者よりも漁業関係者や釣りや遊びなどで海にいく人が発見することが多いそうです。例えば、海水浴や釣りなどで見たことない生物を発見した場合は、写真だけでも撮っておくといいそうです。誰もが環境の変化に敏感になることが大切ですね。

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