政府は、認知症についての関心や理解を深めてもらおうと、今年から9月を「認知症月間」と定めました。
認知症を予防するために各地で行われている取り組みと、最新の治療法を取材しました。

認知症の人や家族、予防しようという人が気軽に参加できる「集いの場」

宮崎県高原町の「オレンジカフェ」。別名「認知症カフェ」とも呼ばれています。

このカフェは認知症の人やその家族、それに認知症を予防しようという人が気軽に参加できる「集いの場」となっています。

(支援員)
「困ったことはない?」
(89歳)
「困ったことはやっぱ若さがほしい!」

介護支援専門員をしている倉住美香代さんが、空き家になった実家を利用して4年前から始めました。

(オレンジカフェ 倉住美香代さん)
「私も楽しみだし、こうやって皆さんと過ごすのが。ここに来ることが楽しいっていう方もいっぱいいらっしゃるし、昔の話をすることで、認知症予防にもなるのですごくいい場だと思っています」

皆で話して、お茶飲んで、冗談言って

このカフェが開かれるのは月に1回。
集まって話をするだけではなく、ランチやグラウンドゴルフに出かけることもあります。

この日は60代から80代までの8人が参加。
みんなでお菓子を食べながら会話やカードゲーム、地域の踊りを楽しみました。

(81歳)
「幸せやね。皆の中でね」
(89歳)
「みなさんに迷惑かけないように。迷惑かけないように子どもの支えがみなさんの支えがあって・・・」

こうした認知症カフェは、県内に60か所以上開設されています。

(参加者・60代)
「話をするというのが一番脳を活性化させるっていうか、いいので、主人を引っ張って連れてきてます」

(参加者・81歳)
「会うのが楽しみで、皆でお話して、お茶飲んで、冗談言って」

(参加者・89歳)
「うちでは1人で農業をしているけど、ここに来たらみんなと顔を合わせておしゃべりできるからね、自分の頭のためにもいいんじゃないかな」

アルツハイマー病の新しい治療薬「レカネマブ」

厚生労働省によりますと認知症を患っているのは現在、65歳以上の8人に1人。
2040年には6.7人に1人になると推計されています。

こうした中、画期的な薬が登場しました。

高鍋町の海老原総合病院。
今年2月から宮崎県内で初めてアルツハイマー病の新しい治療薬「レカネマブ」の投与を始めました。

(アルツハイマー病患者の夫)
「もう、うれしかった。打てるといわれた時には。結婚してから65年になるんですよ。今まで苦労してきたんだから、(治療を)やろうと言ってから今まできている」

アルツハイマー病は、認知症のうち6割以上を占める病気で、脳内に「アミロイドβ」や「タウ」と呼ばれるタンパク質が蓄積し、神経細胞が減っていくのが原因と考えられています。

「レカネマブ」は、「アミロイドβ」を取り除く国内初の薬で、厚生労働省が、去年、国内使用を承認しました。

(海老原総合病院・神経内科専門医 望月仁志副院長)
「病状の進行が本来のスピードよりも1.5倍ぐらいのペースに遅れるというふうなことが研究でわかっています。実際にはちょっと良くなる人もいるし、あまり効かない人もいる」
(記者)
「(症状が)治るわけではない?」
(海老原総合病院・神経内科専門医 望月仁志副院長)
「今の時点では治るわけではないです」

これから5年・10年でいっぱい出てくる治療の第一歩に過ぎない

投与の対象は、軽度認知症とその前段階の軽度認知障害の人。2週間に1回の点滴を原則1年半続けます。
脳のむくみや脳出血といった副作用のリスクもあります。
費用は1人あたり年間およそ298万円で保険適用の対象となっています。

県内で、この治療を受けているのは現在5人。
こちらの80代の女性は、今年2月に薬の投与を始めました。

(アルツハイマー病患者)
「孫やひ孫がいっぱいおるからね。助かっています」
(アルツハイマー病患者の夫)
「物忘れが激しい。そして同じことを何回も言う。妻はお酒が好きだから、お酒を飲むのはいい。だけど、自分で何本飲んだかわからない。これが怖い」
(アルツハイマー病患者)
「わからないときがある、たまにね」
(アルツハイマー病患者の夫)
「住所とか自分とこの名前は書ける。薬のおかげでここまで来ていると信じている。今だったら、僕の手でまかなえる。これ(症状)が重かったら、とてももたないです」

望月医師は、レカネマブをきっかけにこれから様々な認知症の治療薬が開発されていくと期待しています。

(海老原総合病院・神経内科専門医 望月仁志副院長)
「いろんな治療が今どんどんどんどん世に出ようと思って開発されているので、それらの治療を組み合わせることによって、症状がストップする、もしくは良くなることが期待できるんじゃないかと思って、この『レカネマブ』はそういう、これから5年・10年でいっぱい出てくる治療の第一歩に過ぎない」

【参考】
認知症の治療には、早期診断が肝心ですので、脳神経内科か精神科の早めの受診をお願いします。

※MRTテレビ「Check!」9月20日(金)放送分から

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