北海道知床半島の観光船沈没事故は、運航会社の社長の逮捕という新たな局面を迎えていますが、地元では観光への影響が続いています。

知床遊覧船の社長・桂田精一容疑者61歳は、運航管理者としての義務を怠ったために2022年4月、観光船「KAZUⅠ」を沈没させ、乗客乗員を死亡させた業務上過失致死などの疑いで19日送検されました。

検察官は、送検から24時間以内に身柄を拘束して取り調べを続けるための勾留請求を行います。

しかし、桂田容疑者の弁護人は「逮捕理由に証拠隠滅の可能性をあげていたが、聴取には応じている。なぜ、事故から2年5か月も経ったこのタイミングの逮捕なのか」と述べ裁判所に却下を求めています。

一方、いまも行方が分かっていない乗客の家族は…

 小柳宝大さんの父親(65)
「つらくて悲しい気持ち、これはずっと変わりません」

こう話すのは、福岡県出身の小柳宝大(こやなぎ みちお)さんの父親です。

 宝大(みちお)さんは写真が趣味で、当時は、会社の上司と北海道旅行をしていました…

18日桂田容疑者が逮捕されたことについて、宝大(みちお)さんに、こう語りかけたと言います。

小柳宝大さんの父親(65)
「やっと逮捕になったか、というのが正直な気持ち。息子の写真と『KAZUⅠ』から引き揚げていただいたリュックサックに向かって「逮捕になった」と。「やっとこれから前に進めるね」と報告しました」

宝大(みちお)さんの父親が今後、望むことは…

小柳宝大さんの父親(65)
「厳罰に処していただきたい。今までみたいに逃げ隠れしないで、罪は罪でちゃんと認めて向き合ってもらいたい」

 20日の知床国立公園です。世界が認めた知床半島の大自然を求め、多くの観光客が訪れていました。一方、小型観光船は強風と高波の影響で、20日も全便が欠航となりました。

 東京から来た観光客
「船に乗りたかったが、きのう、きょう、あすと欠航になったので、ほかの所を回ろうかなと」
「慎重に対策されているのかなって」

観光船の沈没事故を受け、ウトロを拠点に小型観光船を運航する事業者は、後続船との出航時間の差が1時間以上生じる場合は、緊急時に備えて仲間の船が港などに待機する自主ルールを定めました。

しかし安全対策が進む一方で、観光客の数は思うように回復していません。

 知床斜里町観光協会 新村武志事務局長
「事故が発生する前はコロナ禍も明けて外のアクティビティ、屋外ということで、かなり客が戻ってきてくれるんじゃないかと予測を立てていたが、事故が発生してコロナ前の数字まではなかなか届かないという現状」

斜里町を訪れる観光客は、2019年度には120万人に迫っていましたが、昨年度は、およそ87万人と、コロナ前の7割程度にとどまっています。

そんな中、廃業に追い込まれた会社も。

石黒拓海記者
「こちらは観光船業者の事務所が並ぶ通りです。知床遊覧船の事務所の隣りにあったドルフィンという業者も今年の3月で、すでに廃業しています」

事故の3か月後、「ドルフィン」を運航していた菅原浩也(すがわら こうや)社長です。

 観光船ドルフィン 運営会社 菅原浩也社長
「売上的には3分の1から5分の1。それもしかたがないですね。なんとか持ちこたえて来年も商売できるように頑張りたい」

こう話していた菅原社長でしたが、客足が遠のいたことで、ことし3月、廃業することを決めました。

 一方、こちらは、知床半島で獲れた新鮮な海の幸を提供するウトロの居酒屋です。店を営むのは、地元の漁師、古坂彰彦(こさか あきひこ)さん。古坂さんは、事故直後から乗客の捜索に参加。マチを元気にしたいという思いから、事故の半年後に店をオープンさせました。

 漁師居酒屋 OYAJI 古坂彰彦さん
「自分たちが取った魚だから活締めや温度管理をして、おいしいものを出せるから、だんだん観光客が増えていると思う。喜んでくれいている、おいしいと言ってくれるから、やりがいはある」

知床斜里町観光協会 新村武志事務局長
「安全の確保があって楽しんでもらうのが、第一になっていますので、そういう発信を続けていきながら、知床の大自然・魅力を体感していただきたい」

事故から2年5か月。観光への影響が続く中、引き続き安全対策の徹底が求められています。

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