水を入れるだけで、おいしいご飯が食べられるアルファ米。今ではカレーライスやナシゴレンなども登場!フリーズドライご飯とは違う“もちもち”食感が残る秘密を探りました。
そもそも「アルファ米」って何?
お米の保存食といえば、「パックご飯」や「フリーズドライご飯」もありますが、日本の防災食品の中で売り上げナンバーワンを誇るのが「アルファ米」です。
フリーズドライが“やわらかめ”なのに対し、アルファ米は“もちもち”が特徴なのですが、どんなお米か知っていますか?
生のお米は固いのに、炊いたらふっくら柔らかになります。それは米が「アルファ化」されるから。アルファ化とは「デンプンの変化」のことで、生米に含まれる固い「βデンプン」が、熱調理で柔らかい「αデンプン」に変わるのです。
炊いたお米を放っておくとカピカピになるのは、冷めることで固いβデンプンに戻っちゃうから。
しかし!ある方法を使うと、アルファ化したまま乾燥し長期保存が可能に。これが「アルファ米」。水を入れるだけで柔らかいご飯に戻るんです。
米は炊かずに“蒸かす”ワケ
『月刊食品工場長』木下猛統 統括デスク:
「国産米で添加物不使用で、しかも賞味期限が5年半!」
その「アルファ米」を世界で初めて開発したのが、『尾西食品』(宮城・大崎市)です。
一体どのように作っているのでしょうか?
今回も、全国200以上の工場を取材してきた木下さんと一緒に工場内部へ!
まず案内されたのは、約6.5mの長さのベルトコンベア。お米がゆ〜っくり流れています。
『尾西食品』本多 晃工場長:
「水をたっぷり吸った米をコンベアに薄く敷いて、蒸気を当てながら約30分蒸かします」
お米を“炊く”のではなく、時間をかけてゆっくり“蒸かす”のが尾西流。
炊飯器で1回1回炊くと効率がイマイチですが、コンベアで流しながら蒸かすことで連続生産が可能になるとのこと。
『月刊食品工場長』木下さん:
「炊飯だと、炊いている最中に米が踊りますよね?」
『尾西食品』本田 晃工場長:
「米が踊って動くと余計な粘り出て、後でバラす時に割れたりくっついたりするので、あえて動かさない」
30分蒸かすと、お米はどうなるのでしょうか?特別に食べさせてもらうと…
THE TIME,マーケティング部 原千晶部員:
「お米を炊いたような、粒だっていますね。ちょっと柔らかい感じで甘くておいしいです」
アルファ米の肝は「乾燥」
この蒸かしたご飯の“うまみを残したまま”、水分だけを取り除けばアルファ米になるのですが、肝となるのが「乾燥」です。
蒸かしたご飯は、箱型の巨大な乾燥機の中で熱風を当て約60分乾燥させますが、その「熱風」にも尾西流のこだわりが。
『月刊食品工場長』木下さん:
「チラっと聞いた話だと、その熱風を作るのにガスボイラーで水蒸気を作って、水蒸気と風を熱交換して熱風にすると。なんでそんな手間なことを?」
『尾西食品』本田 晃工場長:
「まず火を使わない安全性。あとはガスの匂いがご飯についちゃうので風だけをあてる処理を行っている」
乾燥が終わったご飯を見せてもらうと、「たたみいわし」のような平たい板状に。
この後、板状にくっついたご飯を粗く砕いたら、企業秘密の製法で1粒1粒のパラパラ状に。これでアルファ米の完成です。
「カレーライス」や「おにぎり」も水だけで!
「アルファ米」と聞くと、その響きから最近の技術のように感じてしまいますが、実は開発されたのは今から80年前の1944年(昭和19年)。
戦時中に潜水艦の乗組員だった『尾西食品』創業者、尾西敏保さんが「潜水艦の中でも火を使わずにご飯が炊けるように」と開発したのです。
今では白米だけでなく、おこわやドライカレー、チキンライス、ナシゴレンなどのエスニックご飯まで登場。
袋に書かれている線まで水を入れて60分、お湯なら15分待てばおいしく食べられるのです。
THE TIME,マーケティング部 原部員:
「ん!もちっとしてますしお米の甘味もしっかり感じます」
さらには、アルファ米で「おにぎり」になる商品も。
パッケージの中がおにぎり型の空洞になっているので、水で膨らんだお米がおにぎりの形にぎゅっと固まるというわけ。
水さえあれば、その場で作って食べられるのでキャンプなどに持っていく人も多いといいます。
カレーハウスCoCo壱番屋とコラボした「カレーライス」もアウトドアで人気。
アルファ米と、そのまま食べられるルーのセットは非常食としても優秀で、アレルギーを招く食材を使っていません。
尾西食品では「避難所で誰一人取り残さない」がモットー。
ちなみに、イスラム教の食事「ハラール」にも、ほぼ全ての商品が対応しています。
“水がない時でも使える”商品も登場
THE TIME,マーケティング部 原部員:
「ただ、やっぱりお水は必要なんですよね?」
いえいえ、水が無くても大丈夫なものもあります。
アルファ米と一緒に「けんちん汁」や「豚汁」が入っているセットなら、水もお湯もない時には汁を入れれば炊き込み風のご飯に!
水がある時は、ご飯と汁物の2品になるのです。
アルファ米が日常食として広まれば、生活に防災意識が根付くはず。『尾西食品』では新たな工場を建設中とのことです。
安住アナが乃木坂46一ノ瀬美空の“お父さん”に?
スタジオでは、乃木坂46の一ノ瀬美空さんがアルファ米の「鮭おにぎり」を試食。外側のパックを切るのに戸惑っていると、すぐさま安住アナが「できる?」と駆け寄り、かわりに切ってあげる場面も。周りからは「お父さんが出動。すぐ来てくれる」と微笑ましい声が上がった。
無事食べることができた一ノ瀬さんは、「もちもち。お米の食感がしっかり残っているし、やさしい味付けでおいしい」と感激。安住アナも「賞味期限5年半で270円だし、水で戻るのがスゴイよね」と驚いた様子で話していた。
(THE TIME,2024年9月18日放送より)
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