自民党総裁選の告示から1週間。9人の候補の意見が大きく割れているのが「選択的夫婦別姓の導入」の是非です。中には、ある事情で「賛成」と明言できない候補もいるようです。

■どうなる?「選択的夫婦別姓」 “賛成”明言できない候補者も

総裁選の争点の1つとなっている「選択的夫婦別姓」。小泉元環境大臣や河野デジタル大臣、石破元幹事長が導入に賛成する一方、慎重派な立場の議員も。

高市早苗 経済安全保障担当大臣
「例えば、婚姻前の氏の通称使用に関する法律案。これが通れば、ほとんど不便はなくなるんですね」

加藤勝信元官房長官
「旧姓について、いわゆる通称使用にとどめることなく、法律上の姓として使用を認めることもあり得る」

通称使用の拡大や、旧姓を法律上も認めることで、「不便の解消は可能だ」と訴える候補たち。家族同姓制度の維持を主張しますが、街の人の意見は様々です。

男性(選択的夫婦別姓に反対)
「夫婦別姓というのは本当の本当の最終手段なのかなと思うので、急いでやる必要があるのかなと思います」

女性(選択的夫婦別姓に賛成)
「今の若い方にとっては、別姓を選べた方が色んな選択肢が広がる」

――名字だけでは家族の絆は変わらない?
女性
「変わらないと思いますけどね」

さらに、候補者からはこんな声も。

小林鷹之 前経済安保担当大臣
「兄弟姉妹でその姓がわかれる可能性のある家庭も出てくるわけで、そこを例えばどう考えるかとか、そこは慎重に検討すべきだ」

夫婦別姓で子どもの姓はどうするのかなど、議論が尽くされていないとの主張。

夫婦(選択的夫婦別姓についてどちらともいえない)
「子どもからすると、難しいかもしれないですね」
「家族でよく話し合わないと、きっと難しい部分があると思いますよね。簡単には決められない」

候補者の間でも賛否が割れる選択的夫婦別姓ですが、林氏、上川氏は“個人としては賛成”との立場をとりつつ、「社会を分断しかねない」として議論を重ねる必要があると強調します。

ただ、理由はそれだけではないようです。

ある陣営関係者
「選択的夫婦別姓の導入に踏みこむと、議員票が減ってしまう。応援してくれる議員との関係もあって踏み込めない」

先送りされてきた選択的夫婦別姓を巡る議論は、総裁選の議論を通じて深めることは出来るのでしょうか?

■「いろんな手続きがとにかく大変」 旧姓に戻さず夫の名字を使用する人も

井上貴博キャスター:
結婚した後、女性が名字を変える割合は約95%と圧倒的です。

とある30代女性に話を聞きました。結婚して夫の名字になりましたが、離婚手続き中にクレジットカードや免許証など「いろんな手続きがとにかく大変」と旧姓に戻さず、夫の名字を使用しています。

また離婚後、子どもは基本的に夫の名字になるので、それを変更するとなると家庭裁判所に行く必要がある。「とにかく大変だ」と話していました。

ホラン千秋キャスター:
どうしても手続きの煩雑さがピックアップされることが多く、「通称使用にすれば不便さはなくなります」と訴えている候補者もいます。

しかし、そういうことではなくて、人生の節目に男女問わず長年使ってきた名前を、ある意味“奪われてしまう”という選択肢しか今ないということ。「面倒くさい」というわがままの問題ではなく、“アイデンティティの問題である”というところにも焦点を当てて議論をしてほしいと個人的には思います。

弁護士 萩谷麻衣子さん:
便利さという点では、この10年で通称姓が使えるようになり広がったことで、かなり解消されてきたと思います。

ただ、パスポートや登記、住民票、運転免許証など自分の身分を証明する公の書類は、必ず戸籍姓が最初に書かれ、その後に括弧書きで通称姓が書かれます。

普通の人は、結婚や離婚を世間に公表しなくてもいいプライベートな問題を、公の書類で公表しないといけない状態になる。特に登記などの誰でもいつでも取れるような書類に、「結婚してるんだ」「戸籍姓はこの人違うんだ」「離婚したんだ」ということを何か公表してるような状態になる。その苦痛はやはり、名前を変えた人でないとわからないと思います。

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<プロフィール>
萩谷麻衣子さん
弁護士
結婚・遺産相続などの一般民事や、企業法務を数多く担当

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