東京・明治神宮外苑の再開発理由の一つとなっている老朽化した秩父宮ラグビー場の建て替えを巡り、事業者側が計画を住民に紹介する際に使う「築76年」という表記に対し、住民側から「誤っているのではないか」との指摘が上がっている。事業者側は、施設が竣工(しゅんこう)した年を基に記載していたが、現在のスタンドの築年数は約40~50年と差がある。指摘を受け、事業者側は「完成してから76年」という趣旨が伝わるよう表記を見直す検討を始めた。(原田遼)

◆スタンドが整備されたのは40~50年前

秩父宮ラグビー場について「築76年」と紹介する明治神宮外苑再開発計画の動画

 「築76年」の表記は再開発のプロジェクトサイトで使われ、「老朽化が進み、バリアフリーなど多様なニーズへの対応が求められている」と建て替えの必要性をうたっている。  三井不動産など4者で構成する再開発事業者の一員で、ラグビー場を所有する独立行政法人「日本スポーツ振興センター(JSC)」によると、施設は1947年に竣工。当初は盛り土で観客席を造っており、その後、改修が繰り返された。現在の3万人を収容するスタンドは、1976~80年代後半に順次整備された。

◆説明会に参加した住民が「誤りでは」

秩父宮ラグビー場

 17日に共産党が事業者から計画の説明を受けた際、参加した住民が「築76年は誤りではないか」と指摘し、出席したJSC側の説明者が「修正を検討する」と答えた。説明者は本紙の取材に「築40年でも老朽化していることに変わりはない」とした上で、「間違いではないが、確かに『築』とつくと建築物の築年数と思う人もいる。(施設の)完成から76年だとわかるような表現を検討する」と話した。  共産党の吉良佳子参院議員は取材に「築40年と築76年ではだいぶ印象が違う。事業者のミスリードで、開発ありきの姿勢を象徴している」と批判した。再開発計画ではラグビー場は現在の神宮球場の場所で建て替えられ、屋根付きで人工芝のスタジアムになる。


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