去年、大阪府貝塚市の夏祭り会場で起きた、暴力団組員らによる突発的な乱闘事件をめぐり、傷害の罪に問われていた組長の男性に、無罪判決が言い渡されました。大阪地裁は、実際に乱闘に参加していない組長に、共謀関係を認めることはできないと判断しました。


▼被害者側が「何かありまんの」と因縁…乱闘に発展

六代目山口組系の暴力団組長(47)は、去年7月に大阪府貝塚市の夏祭り会場で、部下の組員や地元の後輩ら9人と共謀し、別の暴力団組員ら3人に激しい暴行を加えけがをさせたとして、傷害の罪で逮捕・起訴されていました。

判決によると、被害者である別の暴力団組員が、組長に対し「何でんの」「何かありまんの」などと因縁を付けたことから、乱闘に発展したといいます。

裁判では、組長が被害者らに直接暴行を加えていない点は争いがなく、共謀が成立するか否かが争点でした。


▼検察「喧嘩を売られた張本人である組長が喧嘩を買わないなど、暴力団としてありえない」と主張

検察側は「最終盤まで配下の組員らの暴行を制止しなかった」「売られた喧嘩を買ったことで乱闘に発展したが、配下の者らが喧嘩を買ったのに、喧嘩を売られた張本人である組長が喧嘩を買わないなど、暴力団組織としてありえない」「被告が直接暴行に及んでいないのは、買った喧嘩を遂行するのに配下の者らに任せて事足りる状況だったからだ」などとして、共謀が成立するのは明白と主張。懲役4年を求刑していました。

一方で会長側は「最初から暴行を制止していた」旨を主張し、共謀は成立しないと無罪を訴えていました。


▼大阪地裁は組長に無罪判決「興奮状態で乱闘している最中に制止するのは、いかに上位の立場でも容易ではない」

9月17日の判決で大阪地裁(設楽大輔裁判官)は、「相手方との間に割って入るなどの積極的に乱闘を制止する行動には出ておらず、少なくとも途中までは暴行を一定程度黙認していた面がある」としつつも、

▽最初に暴行を始めた配下の組員は、因縁を付けてきた被害者の態度に腹を立て、被告の意思と関係なく自らの判断で暴行を加えた可能性を否定できず、反撃を受けるなどして興奮状態で更なる暴行に及んだと認められる
▽乱闘に加勢した者らも、相手方から暴行を受けて頭に血が上ってさらなる暴行に及んだと認められる
▽被告は乱闘を促進しているような言動はしておらず、むしろ何度か『やめとけ』と発言していた可能性が否定できない」

「複数人同士が興奮状態で乱闘をしている最中にそれを制止することは、いかに上位の立場にあるといっても容易ではない」「乱闘に加わっていない被告が、自分や組の威信を守るなどの理由で、因縁を付けてきた相手方に制裁を加えさせたなどと評価するのは困難」として、「共謀があったとは認められない」と判断。

組長に無罪を言い渡しました。

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