宮城県大郷町の農地にサッカー場などを整備する「スマートスポーツパーク構想」。この構想、町は運営会社とすでに協定を結んでいるものの、関連予算案が町議会で2度否決され議論が進んでいません。町と議会が対立する理由は一体何なのでしょうか。

すれ違う町長と議会

大郷町 田中学町長:
「大郷町を広く知ってもらえるきっかけを作れる自信をもってこの事業に取り組んでまいりました」

9月6日、大郷町議会の9月定例会ではスマートスポーツパーク構想について民意を問う「住民投票」を行うための議案について採決が行われました。

赤間則幸 大郷町議:
「大郷町の未来のため、町民の熱い思いがかなえられることを願っている次第です」
鎌田暁史 大郷町議:
「町の意向に沿わないからといって、これらの議決を無視して住民投票を進めようとするのは議会軽視ではないでしょうか」

採決の結果、議案は否決されました。この結果を受け、田中学町長は。

大郷町 田中学町長:
「本町の抱えている課題を議会が理解しているのかというところに疑問を覚えざるえないので、町民と共に町づくりを諦めないスタイルをとってまいりたい」

そもそも「スマートスポーツパーク構想」とは

この構想は大郷町の粕川地区の農地に、サッカー場12面とあわせて1200人が宿泊できる施設を2棟、それに農業団地を併設するものです。

※イメージ

土地の整備は町が、建物の建設やサッカー場の運営は京都市のスポーツ運営会社「スポーツX」が担当します。

このスポーツXは京都市に本社を置くベンチャー企業です。資本金は11億7440万円、サッカーJ3・福島ユナイテッドFCの運営やプロ野球・埼玉西武ライオンズの野球スクールの運営事業を行っています。

構想の予定地は、2019年の台風19号で近くを流れる吉田川が決壊するなどして被害を受けた農地で、農業の担い手不足も相まって計画地に選ばれました。広さはおよそ60ヘクタール、東京ドームおよそ13個分です。また、国土交通省の支援により土地の造成に必要な土は吉田川の堤防を工事する際に削られた土を再利用する予定で、造成費用が削減できることになっています。

町が構想を早く進めたいのは、国交省との取り決めがあることも理由です。構想が実現すれば、交流人口は年間およそ80万人増えるとしていて将来的には定住人口も増やしたい考えです。

町民はどう思っている?

この構想について、町民はどう受け止めているのでしょうか。

大郷町民:
「半々という考え。大郷町はなにもない地区なので、ひとつの賭けみたいなことにもなるかも知れないがチャンスになるとも思う」
「地元の活性化につながると思うのであったほうがいい。若い人たちが来てもらえる。PRにもなる」
「私たちは農業をずっとやるわけにもいかないし、大きな会社でやるのは町のためにはいいこと」

「慎重派・反対派」の人もいましたが、町民からはおおむね前向きに捉えている声が多く聞かれました。こうした中で、なぜ議会は構想に反対するのでしょうか?

議会が構想に反対する理由

反対派の議員の1人に話を聞きました。

鈴木利博町議:
「やはり事業者自身の企業力が懸念材料かなとは思う」

構想に反対している鈴木利博議員は、運営会社、スポーツXの「経営状況」に不安があるといいます。

鈴木利博町議:
「決算状況を見せていただくと、売り上げもそんなにとるわけじゃないし、累積赤字になっているし。確かに赤字になっても、どこからかお金を調達すれば確かに企業は成り立つが、それをあからさまにしているのはちょっとな、と」

そのうえで、町が主導して事業を行うことに懸念を示します。

鈴木利博町議:
「万が一うまくいかなくて途中で頓挫した場合、現状復帰するにしてもお金もかかるし、建物も今の事業者が宿舎を建てた場合、銀行の抵当権の設定もある。端的に言うと、町が土地を購入しないで事業者が直接買ってやるぶんには全然問題ないと思うんですけど。盛土をするにあたっても、町でどうしても一旦買わなければならないと」

運営会社の経営状況、そして町自体も経営のリスクを負うと懸念する鈴木議員。「構想を進めるより、仙台市中心部まで車で1時間以内という立地を生かして宅地整備に力を注いだほうが定住人口も増えるのでは」と主張しています。

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