今年は、台風10号やゲリラ豪雨、南海トラフ地震臨時情報の影響で全国各地の花火大会が相次いで中止となりました。“急きょ”決まった花火大会の中止。準備していた花火は、どうなるの・・・?花火事業者に花火のその後を聞きました。

開催直前 ゲリラ豪雨で濡れてしまった花火

開催を断念せざるを得なかった花火大会の一つ、東京「足立の花火」。開始20分前に荒天のため中止となりました。

(足立の花火 開始20分前に中止が発表された)

足立区観光交流協会 担当者
「あとは点火するだけ、というタイミングでの中止になりました。花火を打ち上げる際に、雨対策はしていたのですが、素早く撤収作業をする際に雨にあたってしまいました」

花火中止を告げると、会場には大粒の雨が降りはじめ、ほとんどの花火が濡れてしまったといいます。

足立区観光交流協会 担当者
「有料席を購入していただいたお客様には全額払い戻しし、約3000万円の収入がなくなってしまったという形です。打ち上げについて2億7000万円の予算で実施をしていますが、準備にかかる経費、打ち上げにかかる経費をほぼ全額をお支払いする形になっています」

荒天、台風、巨大地震注意などで全国的に影響が・・・

中止になった花火大会は、足立の花火だけではありません。

8月9日に宮崎県で最大震度6弱を観測した地震に伴い、気象庁から南海トラフ地震臨時情報(巨大地震注意)が発表され、対象地域で中止となる異例の事態となりました。

さらに、台風やゲリラ豪雨、大雨の影響などで、33か所の花火大会が中止・延期となっています(※1)

▼中止・延期になった花火大会(一例)
東京 足立の花火 74万人/1万3000発〈荒天のため(ゲリラ豪雨)〉
秋田 第72回 本荘川まつり花火大会  6万人/3000発〈大雨〉
山形 酒田の花火2024 1万2000人/1万発  〈大雨〉
静岡 焼津海上花火大会 20万人/5000発〈巨大地震注意〉 
神奈川 第38回 宮ヶ瀬ふるさとまつり 1万5000人/75発〈台風7号〉
和歌山 2024 南紀白浜花火フェスタ 7万2000人/2500発〈巨大地震注意〉
宮崎 小林市すき納涼花火大会 1万人/1500発〈巨大地震注意〉
群馬 くろほね夏まつり 3500人/1100発〈台風7号〉
埼玉 小江戸川越花火大会 2万人/6000発〈荒天のため(ゲリラ豪雨)〉
栃木 尊徳夏祭り大花火大会 5万人/1万発〈台風10号〉
高知 第20回しまんと市民祭 しまんと納涼花火 5万人/6000発〈台風10号〉

準備されていたのに、打ち上げることができなくなった「花火」はどうなるのでしょうか。

「特別警報」が発表された地域 損害は約1140万円

7月27日(土)に開催するはずだった秋田県・由利本荘市の「第72回 本荘川まつり花火大会」。

25日から降り続く大雨で、花火が打ちあがる由利本荘市には、一時、「緊急安全確保(警戒レベル5)」が発令されました。

(「第72回 本荘川まつり花火大会」準備していた会場の様子)

由利本荘市 観光協会 担当者
「花火の打ち上げ台や会場内の電気工事・配線工事、有料席など資材の設営準備まで完了していました。約1000万円ほどかかりました」

花火そのものに被害はなかったものの、花火の打ち上げ費用、広告宣伝費、会場設営費が発生。また有料席収入等がなかったことを合わせると1140万円の損害になるということです。

「巨大地震注意」の花火はリベンジ開催へ 台風では「持ち越す」自治体も

(2023年の小林市すき納涼花火大会の様子/例年1万人が訪れる)

「巨大地震注意」で中止となった宮崎県の「小林市すき納涼花火大会」も会場の設営は進めていましたが、花火自体の被害はありませんでした。9月に改めて開催できる見通しがたち、本来であれば発生するようなキャンセル料もなく、損害は10万円程度でおさまったということです。

(準備していた園児が作った灯籠 ようやくお披露目となる)

「台風7号」の影響で中止になった神奈川県・清川村の「宮ヶ瀬ふるさとまつり」では、3日間あるうちの1日だけ、台風7号の影響で花火をあげることができませんでした。余ってしまった花火は業者さんに管理してもらい、9月22日に行われる「きよかわむらまつり」の際に打ち上げるということです。

打ち上げられなかった“濡れた”花火の行方は?

再び夜空を彩る日を待つ花火がある一方で、濡れてしまった花火はどうなるのでしょうか。

足立区によると「中止になってしまった花火は当日中に花火事業者に回収してもらう」といいます。

その先ではどんな作業が行われているのか?花火事業者さんにお話を伺いました。

(足立の花火 有料席も払い戻しとなった)

花火事業者
「すべての花火について、濡れていないか目視によって確認しました。また、打ち揚げ筒の内側が湿っていたり、筒の上部や蓋が濡れていたら、花火玉自体が濡れていなくても再利用できないと判断しています。

仮に、一度濡れた花火を再利用したとなると、花火が上空で開かず地上に落ちてくる危険があります。せっかく手塩にかけて作った花火ですし、非常にもったいないのですが、安全を最優先に考えると廃棄せざるを得ない状況です。

万が一にでも、その花火で誰かが怖い思いをすることになれば、我々は一生後悔することになります」 

さらに、打ち上げられなかった花火についての想いも答えてくれました。

(足立の花火 中止になり帰路につく親子)

花火事業者
「花火を作るのはいくつかの工程を経て完成します。すべての工程は手作業になるので、花火への思い入れは少なからず有ります。

思い通りに開いた花火を見たお客様が喜んでいる姿を見られれば、達成感を最大限感じられる、花火師冥利に尽きる瞬間を味わえます。その瞬間のために、日々花火作りに邁進しております。

やむなく解体することになった花火の解体作業は非常に危険を伴う作業となるので、余計なことは考えず、目の前にある花火玉を安全に解体できるように心がけながら作業しています。ただ、お客様に喜んでもらえるようにと作った花火が、夜空に咲くことが叶わず、自分の手で解体しなければならないときの心情はお察しいただければ幸いです」

私たちが「楽しみにしてたのに!」と残念に思うのは、その時だけかもしれません。しかし、花火大会を運営している方、なにより1年かけて花火を作ってきた花火師さんたちはそれ以上に悔しい思いの中、撤収作業や処分を行っていることを心に留めておきたいです。

花火シーズンはそろそろ終わりを告げますが、ひとつでも多くの花火大会が無事に開催されることを切に願っています。

取材:TBSテレビ デジタル編集部・小林愛

(※1)花火大会2024 乗換案内のジョルダン調べ 9月13日時点

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