脱炭素社会の切り札として、大きな期待がかかる「水素」。地球上に無尽蔵に存在し、エネルギーとして使用しても二酸化炭素を排出しないことから、化石燃料に代わるクリーンエネルギーの大本命と言われている。
その水素の“ある画期的な製造方法”で、世界から熱視線が注がれている企業があると聞き、富山県高岡市に向かった。
田んぼに囲まれた町工場。一見すると、ここに最新の水素製造機器を開発した企業があるとは思えない。ベンチャー企業のアルハイテック代表取締役の水木伸明社長(64)を直撃した。
“アルミくず”をつかった画期的な製造方法とは…
紹介してくれたのは、縦横1.5メートルほどの四角い箱。これが2022年に発売された水素製造装置で、世界を驚愕させたマジック装置だ。
一般的に水素を製造するには、石油や天然ガスなどの化石燃料が必要で二酸化炭素が排出されるが、ここで使われるのはアルミくず。
アルミニウムの製造過程で工場から排出される端材だ。そこに“ある反応液”を混ぜると、水素が発生するという。
しかも、二酸化炭素は出さず、同時に資源として使える水酸化アルミニウムを作り出すこともできるのだ。
“水素1キロ”で電気自動車が180キロ走行可能
例えば、9キロのアルミくずから1キロの水素を作りだすことができ、しかも26キロの水酸化アルミニウムという副産物も生み出す。1キロの水素があれば、電気自動車で約180キロの走行が可能だ。
また、水酸化アルミニウムは燃えにくいという性質から建物の壁材や壁紙などにも使われたり、電気を通しにくいことから電線の被膜や半導体にも使われたりする貴重な素材だ。
発想は…あの有名映画のタイムマシン
ポイントは、アルミくずを水素に変える反応液。しかし、これは企業秘密で、それまで饒舌だった社長も黙して語らず。発想は、1980年代の大ヒット映画「バック・トゥ・ザ・フューチャー」のデロリアン号というタイムマシン、夢の乗り物に遡る。
家庭ごみを直接燃料に変えて車が走り回る様は、まさに未来のエネルギー社会そのものに社長には見えたのだ。私も、その映画を何度も見たことがあるが「タンクの中にアルミくずを入れ、水素というエネルギーが作られ、車が走る」。
まさに、あの映画に近い社会ではないだろうか。タイムトラベルこそできないが、水木社長は実写版のドクことエメット・ブラウン博士ということか。
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