12日午後6時半ごろ、東京都日野市多摩平の緑地で、イチョウの枝が折れて落下し、歩いていた男性(36)が下敷きになった。男性は約1時間後に助け出されたが、搬送先の病院で死亡が確認された。現場は誰もが通れる遊歩道。強風などの影響がなくても太い枝が折れており、現場を見た樹木医は早めの剪定(せんてい)を求めた。(岡本太)

枝が折れて落ちた状況を調べる捜査員ら=13日、東京都日野市で

◆最大で直径30㎝、長さ5mの枝が落下

 警視庁日野署によると、高さ10メートル超のイチョウの枝が上部で折れ、下方の枝を巻き込みながら落ち、少なくとも6本が落下した。最大で直径約30センチ、長さは約5メートルだった。現場はJR豊田駅の北700メートルで、市立中学校と団地の間にある市が管理する緑地。イチョウ並木の遊歩道で人が自由に出入りでき、男性は偶然通りかかったとみられる。署は枝が落ちた原因を調べている。  市によると、緑地は1960年ごろに整備されたとみられ、イチョウを含めて約30本の木が植えられていた。枝が落ちたイチョウは市が昨年11月に剪定。今年7月と8月に目視で点検し、異常を確認していない。

13日、枝が折れて落ち、男性が死亡した現場=東京都日野市で

 隣接する団地に住む女性(83)によると、発生直後に多くの救急隊員や警察官が駆け付けたが、枝を取り除く作業が難航し、ノコギリを求める大声が飛び交っていた。「落下する1時間ほど前に、買い物帰りに現場を通ったばかりだった。団地の住人だけでなく、中学生も近所の人も通るので怖い」と話した。  事故を受けて市は13日、管理する公園や緑地の樹木の一斉点検を開始。大坪冬彦市長は「本人と家族に深くおわびする。再発防止に全力で取り組む」とのコメントを発表した。   ◇

◆「枯れていたとは考えられない」

 13日に現場を確認した日本樹木医会の小林明理事は「落下した枝には実が多くついており、全体で数十キロの重量になっていた可能性がある。上の方にあった枝が重さに耐えられなくなって折れ、下の枝を次々に巻き込んでいったのではないか」と話した。  木の状態については「折れた部分の色を見る限りは健康で、枯れていたとは考えられない。実の重さに加え、9月上旬の大雨で水分が加わってさらに重くなり、限界を超えたのだろう」と推測した。  倒木などでの死亡事故は、全国でこれまでにも起きている。2022年8月には鹿児島県の小学校で、樹齢160年を超えるイチョウの枝が折れ、下敷きとなった校長が死亡。昨年4月には相模原市のキャンプ場で、テントで就寝中だった女性が倒木の下敷きになり死亡した。  国土交通省によると、国や自治体が管理する道路では、車の衝突なども含めて年に平均約5200本の倒木が発生。公園や緑地では23年度、倒木などで人がけがをする事故が全国で2件報告されている。  小林理事は「頻繁に起きるわけではないが、イチョウなど実をつける木では今回のように、枯れていなくても枝が折れて落ちることがある。公園や緑地など倒木のリスクが高い場所では、早めに枝を剪定するなど、対応を考える必要がある」としている。 

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