東京電力は10日、福島第1原発(福島県大熊町、双葉町)の2号機の格納容器底部に溶け落ちた核燃料(デブリ)の微量を採取する作業に着手した。採取作業は2011年の事故後で初めて。2週間ほどかけて3グラム以下の小石状のデブリを回収する。8月22日の着手予定がミスで延期されていた。東京電力は成分を分析し、本格的なデブリ取り出しにつなげたいとするが、工程の見通しは立っていない。

◆強い放射線…回収は3グラム以下

作業員が装置にパイプを押し込み、デブリ採取に向け作業に着手した=東京電力提供

 東電によると、作業員が午前7時20分に、建屋内の格納容器に隣接するスペースに設置された装置に細長いパイプを押し込んで、格納容器の空気を遮る隔離弁を通過させた。隔離弁の通過をもって「着手した」と発表した。  今後、計5本のパイプを継ぎ足して20メートルほどに伸ばし、格納容器内の圧力容器の下部まで到達させる。そこから釣り糸をたらすように棒を下ろしていき、先端のはさみのような形の器具で、容器内の底部にたまるデブリの微量をつかみ取る。

つりざお式の装置側から格納容器側を見た様子。パイプが格納容器側に伸びている=東京電力提供

 回収するデブリを3グラム以下にするのは、強い放射線を出している可能性があるからだ。作業員の被ばくを抑えるため、回収途中で線量を調べ、1時間当たり24ミリシーベルトを超えた場合は格納容器内に戻し、別のデブリを採取するとしている。

◆本格的な取り出しは時期未定

 8月22日に採取着手を試みた際は、直前になってパイプの順番が誤っていたことが判明。東京電力や元請けの三菱重工業の担当者らが確認を怠っていた。その反省を踏まえ、今回の採取では東京電力社員が作業に立ち会い、確認に当たった。  東京電力は回収したデブリを日本原子力研究開発機構の研究施設(茨城県大洗町)に持ち込み、成分などを分析し、炉内の状況を推定したいとしている。  デブリ取り出しの開始は2021年の当初目標から3年遅れた上に、わずかな量の採取にとどまる。1~3号機に堆積する大量のデブリの本格的な取り出しにとりかかる時期や工法も定まっていない。(荒井六貴、山下葉月) 

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