4年前に愛媛県久万高原町で女子児童がいじめを受け、重大事態と認定されるまでに3年余りかかった問題。背景に何があったのか、そして浮かび上がる課題を取材しました。

小学5年の時、仲間外れにされ…

女子児童の父親
「(娘が)涙が止まらなくなってしまうことがあったりして、親としては、そういうような精神状態から何とか救い出してあげたいっていうのが一番でした」

父親は、いじめを受けた娘を、胸が張り裂ける思いで見守り続けました。

男性の娘は、小学5年生だった2020年1月から、学校で仲間外れにされるなどのいじめを受けます。

女子児童の父親
「ある一定、あるところを過ぎてこれ以上は学校に行けないという状態になりまして、家にいてもいじめられている時のことを急に思い出したりとか、夜もなかなか眠れないとか」

いじめ行為があること学校に伝えるも…事実確認は2か月以上あと

11月になると女子児童は登校ができなくなり、父親は、いじめ行為があることを学校に伝えます。しかし、学校側がいじめ行為について関係者に事実確認をしたのは、2か月以上後でした。

女子児童の父親
「事実確認は第一歩でして、結局何が起こったかは誰にも知られないまま、しんどい思いをしている子どもだけが取り残されたっていうような状況だった」

いじめ防止対策推進法では、児童や生徒がいじめによって心身に重大な被害が出たり、長期欠席したりする場合は、重大事態と認定し、学校や自治体が第三者委員会を設置して調査することなどを義務付けています。

しかし、女子児童の場合、2か月ほど欠席が続いても重大事態が発生したという報告はどこからも上がらず、結局、町に第三者委員会が設置されたのは、児童が不登校となって約2年半後の2023年2月。第三者委員会の報告書がまとまるまでには、さらに1年を要しました。

女子児童の父親
「ずっともどかしい思いで、いつになったらちゃんと対応してくれるのかなと感じてましたので、(全てが)終わって3年半かかってびっくりというよりは、3年半の間でなかなか進まないなということを感じながら、この状況が進むのを待っていた」

「法律の認識が甘かった」対応が遅れたわけ

なぜこれほどまでに対応が遅れたのか。

私たちの取材に応じた久万高原町教育委員会の小野敏信教育長は、まず、組織として法律の認識が甘かったと振り返ります。

小野敏信教育長
「防止法、ガイドラインといったところを、隅から隅までまで腹入りをしていたかというと、必ずしもそうではなかった、足りなかったところはあったように思います」

さらに学校は当初、この問題をあくまでも教育現場で解決する問題と捉えていたと話します。

小野敏信教育長
「教育の問題として、教育委員会も学校も教育のプロですわね。プロとして、やはりもっと取り組むべきことはあるんじゃないかというようなことで、教育の問題として解決をしていきたいという思いはあるわけです」

予算の問題、ノウハウも不足…

また、対応の遅れには予算の面もあったと釈明します。

久万高原町では第三者委員会を設置するのが初めてで、設置に向け動きだした2022年の3月時点で、町全体の予算のうち自由に使える予備費は1000万円程。結果的に、調査費は委員への報酬を含め約400万円かかったものの、当時、教育委員会に割り当てられた予算で賄うことは難しかったと説明します。

また、職員に委員の選定といったノウハウも不足していたといいます。

小野敏信教育長
「スケジュール的に難しいということで断られたケースもありましたし、久万高原町に何らかの関わりを持っている先生方は委員の中に加えることが難しい。実際に大学の学部長や学長のところに事情を話してお願いに何度も足を運んだり、弁護士の先生方を訪ねたり、そんなことでかなり時間がかかりました」

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