「社員」として農業に従事する「サラリーマン農業」という取り組みが松本平で進んでいます。
会社員として農業をする若手社員に密着しました。


7月、安曇野市の畑で進むそばの収穫。

作業を行うのは、松本市に本社を置く農業法人・かまくらやの若手社員です。

「社員」と呼んでいるのは、かまくらやがサラリーマン農業を取り入れているからです。

企業への就職と同じように毎月決まった収入があり、週休2日で農作業を「仕事」として行います。

トラクターなど農業機械への初期費用が掛からないことなどもメリットです。

天候に左右されやすい農業ですが、休みは確保できているといいます。

入社10年目 長岩佑弥さん:
「雨で作業日程がずれてしまう事もあるので、やれるときに日が昇って明るいうちは作業を進めていくようにしていて、雨降った時には休むなどメリハリをつけて進めています」

かまくらやでは、2014年から10年連続で新卒を採用し、地元の農業高校や農業大学校の卒業生など若手社員が働いています。

現場の作業員と密にコミュニケーションをとっている永井春輝(ながい・はるき)さんは26歳で、そば担当のリーダーに抜擢されました。

作業の指示や進ちょくの確認を任されています。

するとそこへ一本の電話が…。

後輩から機材トラブルがあり助けを求める連絡でした。

すぐに現場に向かいます。

「どうしちゃったの?」
「刈り取り部が詰まっちゃって…」
「頑張って詰まりを取りますか」


永井春輝さん:
「なにかしらのトラブルは毎日あるので、なるべく早く解決できるように、みんなで力を合わせてやっています」

後輩社員:
「教師のようなイメージでいろいろ教えてもらいながら、いろんなことをやらせてもらっているので、ありがたいです」

永井さんが率いるかまくらやのそば部門は、年間230トンを収穫。

県内トップの収量だと言います。

刈り取りから2週間ほど後に改めて畑を訪ねると…。

畑を耕し、秋そばの種まきに取り掛かっていました。

県内トップとなるには「二期作」など社員の研究と工夫があります。

もう一つの特徴が農地です。


全部で200ヘクタールありますが、地図で見ると、松本平に点在しています。


いずれも農業を出来なくなった人などから預かっているのです。

農地を預けた男性:
「労力がないもんで、女房と2人では面積が大きくて、できなくなってしまって、荒廃農地を作ってしまうとえらいことになってしまうので、去年からお願いしました」

そばを育てることで農地が荒れるのを防ぎ、景観にも一役買っています。


全国に誇れる信州そばを作ろうと、かまくらやが歩み始めたのは2009年のこと。

従業員はスタート時点で3人でしたが、およそ15年で33人まで増えました。

今、力を入れているのが「農福連携」です。

2021年に子会社・安曇野みらい農園を立ち上げると、障がい者の自立した生活に向けた就労支援事業もスタートさせました。

安曇野みらい農園には、現在、12人の利用者が在籍。

野菜のカットを担います。

上原記者:
「1日に何キロ切るんですか?」
利用者:
「200キロくらいですかね…」
細萱さん:
「違います!300ですよ!」

1日にカットするのはおよそ300キロ。

その日のうちに県内の食品メーカーなどに出荷されます。

指導員を務めるのは細萱愛麟珠(ほそがや・ありす)さん22歳です。

細萱さんは入社2年目。

親会社のかまくらやから出向しています。

「サラリーマン」である以上、時には「出向」を命じられることもあるのです。

細萱愛麟珠さん:
「今年2月に(出向で)来てから、毎日作業を一緒にしていくなかで、みんなのことを頼りたいし、頼ってほしいとも強く感じていて、みんながいないと仕事が回らないので、いいチームとして量も質も高めあえる様になりたい」

利用者も出荷という大切な工程を任されることで責任感も生まれています。

利用者:
「自分がカットした玉ねぎが加工されてスーパーなどに出されるので、そこにやりがいを感じます」


県によりますと、農業法人として新卒者を毎年採用していることや、障がい者の就労支援を農業と結び付ける取り組みは全国でも珍しいということです。

若手の「社員」が新たなチャレンジを続ける原動力となっています。

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