最高時速およそ100キロ。広大な海原を爽快に走り抜けるのはPWC、パーソナル・ウォーター・クラフト、いわゆる水上バイクです。操っているのはなんと学生。日本で唯一の部活動PWCレスキュー部の実態に迫ります。

山口県周防大島町・小松港のすぐ近く。ここで活動するのが大島商船高専のPWCレスキュー部です。

中本滉大さん(3年生)
「エンジンかけていきます。これはエンジンの停止、これが緊急停止のピンですね。これをこんな感じで腕につけて走るんですけど、仮に搭乗者が放り出されてもポッととれて、エンジンがすぐ止まる仕組みです」

この水上バイクを使い、海で溺れた人の救助方法を学ぶのが、PWCレスキュー部です。

中本さん
「全国の大学、高校を合わせてもうちしかないです」

機動力を生かして人命救助
顧問を務めるのは13年前にこの部を立ち上げた幸田三広先生。当時ハワイで広まりつつあった水上バイクを使った人命救助の存在を知り、感銘を受けました。

幸田三広先生
「ライフセーバーっていう方が海水浴場にいますけども、人力で泳いでいくとかボードを使ってですね、サーフボードみたいなのがあるんですけど、そこで人をよいしょって乗せて人力で帰ってきますのでどうしても時間がかかります。水上オートバイっていう機動力のあるもので人を救える、こういう風に素早くですね、人命救助できるんだ、これはすごいっていう風に思って」

現在は海を愛する7人の部員が所属しています。授業カリキュラムとの兼ね合いから全員が集まっての活動はほとんどできません。この日も練習に来たのは2人。ことし4月に入部したばかりの4年生・笠井遥稀さんと副隊長を務める3年生・中本滉大さんです。

笠井遥稀さん(4年生)
「もともと乗り物が好きなのでスピードのある乗り物でここにジェットがあったんで入ろうかなーって」

水上バイクの免許は16才からとることが出来ます。笠井さんも先月取得しました。

笠井さん
「やっぱ気持ちいいです走ってて。瀬戸内海だと波も穏やかなんで走りやすいですし」

レスキューの技術を磨く
試運転を終え、いよいよレスキューの練習。笠井さん、実はこの日が初めてでした。まずは一番の基本、海に浮いている仲間を水上バイクで救助し、後ろの大きなビート板に乗せる練習です。

幸田先生
「そうそうそうそう、で、ぎりぎりのとこで左側。そう、引っ張って後ろにぐーっと投げ上げるような感じ。ただつかむだけじゃない、しっかり引っ張り上げて後ろにぐーんて投げる感じ。まっすぐー、まっすぐー、そういい感じいい感じ」

笠井さん
「人に当たらないようにかつ近づくできるだけ近づかなきゃ行けなかったんで考えることも多くて大変でした。教官とか先輩のアドバイスを受けながら上達していきたいです」

ここからは溺れた人を助ける練習。後ろの仲間がビート板に乗り、そこへ要救助者を引き上げます。

中本さん
「要救(要救助者)発見、周囲の安全よし、大丈夫ですかー、意識あり、Bフォーメーションで行く。大丈夫ですよー、左手挙げてください、後ろから乗ってください」

中本さん
「助けに行くっていうのは陸だったらすぐに走って行けるんですけど海だとやっぱり小型船とか水上オートバイを使わないと出来ないので、限られた中で使えるスキルを身につけられるっていう」

人命救助に動ける学生育てたい
彼らが部活動として、実際に海に出て救助活動をすることはありません。では何のために学ぶのか?

幸田先生
「学校では防災授業とか人命救助ってとこにこだわっていますので、やはりそういった場面に今後遭遇したときにとにかく傍観者にならずに、少しでもいいから関わってほしい。彼らは多分そういう場面に遭遇したときには率先して人命救助、心肺蘇生も含め関わってもらえると思いますんで、そういう学生を1人でも多く育てたいというのが今の思いですね」

中本さん
「海は広いし大きいですよね、けどそれと同時に危険もいっぱいなんで」

いざとなったときにすぐに動ける人であれるように。日本で唯一の部活動。その根底には海を愛する人たちの思いがありました。

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