松本県ケ丘高校の自然探究科。
実験や観察などを通じて自然科学の分野を中心に学習を深めています。
この自然探究科の3年生2人が、自然災害などで廃棄される野菜を有効活用したいと、ある研究に取り組んでいます。

女子高校生2人:
「こんにちは」
「お願いします」

松本県ケ丘高校自然探究科3年の清水結月(しみずゆづき)さんと渡邉咲奈(わたなべさきな)さん。

2人は自然科学分野で信州が抱えるさまざまな課題とその解決策を研究しています。

渡邉さん:
「私たちは『廃棄食品』の有効活用をテーマに探究してきました」

その研究成果がこちら。


渡邉さん:
「廃棄野菜で作るエコな肥料です」

エコな液体肥料、その作り方です。

まずはミキサーを使ってキャベツを細かく刻み…。

そして、搾って出てきた水分を使います。

清水さん:
「私が小さい頃にお父さんが餃子をよく作ってくれたんですけど、お手伝いした時にキャベツを刻んで水分を搾って入れていたんですけど、この水分がもったいないなって、なんか有効活用できないかなっていうので発想を得ました」

しかし、キャベツの搾り汁だけでは肥料になりません。

清水さん:
「そこで私たちが着目したのは『活性汚泥』といって、私たちはここに廃棄食品とかを入れて肥料を作ることをしました」

「活性汚泥」は、主に下水処理で使われている微生物の集合体です。

小学生の頃の下水処理施設見学で学んだ浄化方法から、微生物の力を肥料作りに生かすアイディアが浮かびました。


渡邉さん:
「植物が育つのに必要な成分には窒素・リン酸・カリの3つがあるのですが、これらの成分っていうのは既存の肥料に含まれているんですけれど、活性汚泥を混ぜることで同様にこれらの成分が多く得られるのではないかと考えました」

2人の研究のため活性汚泥を提供したのが、安曇野市と松本市の一部地域の下水処理を行う「アクアピア安曇野」です。

活性汚泥は下水の汚れを取り除く重要な役割を果たします。

アクアピア安曇野を管理する県犀川安曇野流域下水道事務所 高橋知之さん:
「活性汚泥というのは有機物の汚れを多く抱え込んだ生きた微生物の塊のことです」

高橋さん:
「活性汚泥に含まれている生きた微生物が汚れを食べて水を浄化しているところになります」
宮入キャスター:
「ブクブクしているのはなんですか?」
高橋さん:
「空気を送っていまして、微生物も生き物ですので、空気を送ることで活性化されて、より汚れを食べてくれるということになります」



2人の研究は、キャベツの搾り汁と活性汚泥を混ぜ合わせ、そこに酸素を送ります。

活性汚泥の中の微生物の働きによって有機物が取り除かれると、透明に近い液体に。

これが肥料となります。

この液体肥料を10日間、豆苗(とうみょう)に与えて栽培したところ。


渡邉さん:
「青いグラフが(豆苗の)長さで、オレンジ色のグラフが重さを表しているんですけども、水道水よりも(廃棄野菜から作った)液体肥料を使ったものの方が、重さも長さも上回るという結果が得られました」

廃棄野菜と微生物による肥料作りは、コンポストなどでもよく見られますが、完成までに時間がかかります。

渡邉さん:
「私たちの実験(肥料作り)が、30分から7時間ほどで終わるものが、コンポストは50日ほどかかってしまうので、短時間で効率的に行う液肥化というものに関しましては、私たちが作ったこの液体肥料の方が、よりよい液体肥料だったと考えられます」

生産者が丹精を込めて育てた農作物。

自然災害にあっても、野菜を廃棄することなく別の形で有効活用したいと、2人の研究は始まり、コロナ禍での休校などの影響で牛乳の廃棄が問題になったときには牛乳で肥料作りに取り組みました。

さらに、信州ならではのリンゴを使った肥料作りの研究も進めています。

清水さん:
「リンゴは活性汚泥を用いて肥料にしていない原液も、水で育てるよりも成長したという面白い結果が得られました。この原因についてはまだわかっていないので、どうしてそうなったのかというような探究もしていきたい」


清水さん:
「今回はリンゴ・キャベツ・牛乳に着目したんですが、例えばイモの葉っぱなども有効活用できるのかという探究も続けたりとか、微生物にも着目して学びを続けていけたらなと思っています」

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