宮崎県内で最大震度6弱を観測した地震からまもなく1か月。
今回、初めて発表された「南海トラフ地震臨時情報」について2回にわたって検証しています。

今回の「臨時情報」を受けて防災の意識が向上したというプラスの面があった一方、ホテルの予約キャンセルや海水浴場の閉鎖などの影響もありました。

初の「臨時情報」発表で見えてきた課題とは。

呼びかけ通り、多くの人が「備え」を進めた

先月8日の地震を受けて発表された「南海トラフ地震臨時情報巨大地震注意」。
その趣旨は「備えの再確認と日常生活との両立」です。

その呼びかけ通り、多くの人が「備え」を進めました。

(ハンズマン 井和丸 健司 副長)
「こんな状態になることはないです。まずない」

地震の後、ホームセンターには、防災グッズを買い求める人が次々と訪れました。

(買い物客)
「携帯用のトイレとかがあるかなと思って。(売り場が)がらんとしているからびっくりしちゃった」
「実際、具体的な準備がほとんどできてなかったので(来店した)」

街で聞いてみても、「臨時情報」をきっかけに備えを見直したという声が多く聞かれました。

(女性)
「防災グッズとか買いに行った」
「シミュレーション(をした)ここに隠れてとか」
(男性)
「ポータブル電源を買ったり、水、非常食とかを玄関のとこに置くようにした」
(女性)
「水と防災ラジオを買いました」

より何かやらなきゃいけないっていう気持ちに

宮崎市内に家族4人で暮らしている福重さんも、今回の地震を機に備えを見直しました。

(福重杏梨さん)
「これは、地震のあとに買った防災バッグです」

シートや給水タンクが入った防災バッグを購入したほか、通帳や生理用ナプキンなどを詰め込んだバッグも用意しました。

(福重杏梨さん)
「簡易用トイレとかが家にとりあえず置いてあるみたいな感じだったので、今回、しっかりバッグに入れてすぐに持ち出せるようにしたのと、あと、防災バッグも足りなかったので、買い足しました」

医療機関で働いている福重さんは、震度5強以上の地震があると、職場に向かわなければいけないため、今後は、車の中にも3日分の備蓄を行うことにしています。

(福重杏梨さん)
「自分も初めて震度5以上を体験したので、より何かやらなきゃいけないっていう気持ちになりました。日頃からしっかり備蓄を行って、備えていきたいと思います」

「臨時情報」の認知度は3割から8割以上に

今回の地震を受けて「臨時情報」そのものの認知度も向上しました。

「南海トラフ地震臨時情報」の制度運用が始まったのは5年前。

国が、去年、行ったアンケート調査では3割足らずの認知度でしたが、「臨時情報」発表後に東京大学が行った調査では、臨時情報を見聞きした人が8割以上という結果でした。

「備えの確認」と「臨時情報の認知度向上」というプラスの面があった一方、課題も浮かび上がってきました。

宿泊の予約キャンセルは宮崎県内で2万4千人に

「臨時情報」が発表されたことを受け、影響を受けたのが観光業界。

宿泊の予約キャンセルは宮崎県内で2万4千人にのぼり、かき入れ時となる夏休みに大打撃となりました。

(ANAホリデイ・インリゾート宮崎 児玉麻衣シニアマネージャー)
「一番の(繁忙期の)ピークのところでキャンセルが出てしまったというところで、かなり大きなダメージ、痛手は受けております」

また、自治体の対応も分かれました。

日南市では、1週間、市内3か所の海水浴場を閉鎖。
宮崎市は、9日・10日に青島海水浴場を、9日に白浜海水浴場を遊泳禁止にしました。

一方、県が管理する宮崎市のサンビーチ一ツ葉や、延岡市、日向市、串間市、高鍋町の海水浴場は注意を呼びかけながら開設されました。

どの程度の対応が望ましいのか それぞれの地域で落としどころ探しを

国からは「ふだんの生活」が呼びかけられたものの、各地で対応が分かれた初の「臨時情報」。

宮崎県の河野知事は…

(宮崎県 河野俊嗣知事)
「県内市町村もそういった防災情報を適切に周知する必要性はあったが、現実問題、なかなかそれが伝わっていなかった部分があります。初めてのことで、より強い反応がそこに出てきたのが、今回のことだったのではないかと考えております。これから、国も県も市町村も、それぞれの立場で、周知を徹底を図っていく」

臨時情報の制度設計に携わった名古屋大学の福和伸夫名誉教授は、運用開始時期が新型コロナの流行期と重なったため、これまで、対応が十分に議論されてこなかった可能性があると指摘。

そのうえで、今後、国だけでなく、社会全体で対応を検証する必要があると訴えます。

(名古屋大学 福和伸夫名誉教授)
「これは一度経験しないと周知もできませんし、それから、当事者意識もできないので、この情報が出たときに『どの程度社会を抑制すれば、社会活動を抑制すればいいか、どうか』。これは政府で決めることではなくて、みんなで相談しながら考えることだと思います。あまりにも極端な対応してしまうと、社会が混乱します。ですから、どの程度の対応が望ましいのか、これはそれぞれの地域で、皆さんで相談していただいて、落としどころ探しをしていただきたい」

(スタジオ)
今回の「臨時情報」発表は、初めてのことであったので、より強い反応が出たと思いますが、ただ、これが回を重ねて、「臨時情報」に慣れてしまうと、危機意識も薄れてしまう可能性を考えると、どのように受け止めたらよいのか、難しいところです。
以前の取材で、防災の専門家が「臨時情報」について、「悲観的にきちんと準備しておいて、楽観的に暮らしていくことが、"災害列島"日本に暮らしていく作法だ」と話していました。
私たちの理解を深めることが大切になります。

※MRTテレビ「Check!」9月6日(金)放送分から

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