熊本県のベテラン漁師が、出荷の際に余った魚を活用した商品を開発しました。「漁師だけど“ちょっとかっこいい”」を目指して生まれた、フランス料理の魅力に迫ります。
サイズや数が合わず…「余った魚」どうすれば
午前3時。熊本県の天草西海岸の沖に、一艘の漁船が戻ってきました。
アオリイカやシマアジ、イサキなど、獲った魚を魚種ごとに仕分けて計量しているのは、漁師歴33年の川端一裕さん(53)です。20歳の時から、父・数年さん(83)と一緒に漁を営んでいます。
川端一裕さん「市場の時間に間に合ったからよかったです」
約40キロ離れた魚市場のセリに間に合うように出荷しましたが…トラックは出発したにも関わらず、箱の中にはまだ魚がありました。
川端さん「数が少なかったり市場に出されなかったり…これは今から帰って調理します」
川端さんが行うのは定置網漁。あらかじめ仕掛けた網に入ってきた魚を獲る漁法のため、出荷サイズや数量が合わず、残ってしまうこともしばしばあります。
そこで5年前から始めたのが「余った魚の加工」でした。
人気はミックスフライ&フランス料理「リエット」
漁を終え、休む間もなく、獲れたばかりの魚をさばきます。
川端さん「やっぱりもったいない。どうしても余る魚があるから、それを少しでも他にできる分、加工品は良かったかなと思うんですよね」
加工商品の一つが、タイやスズキなど様々な白身魚をメインに使ったミックスフライです。
川端さん「簡単に料理できるものを、皆さん好まれているようです」
『道の駅 天草市 イルカセンター』で販売される中でも人気なのが『IWOリエット』。リエットとは、フランス料理の一つです。
道の駅スタッフ「パンとかに塗って食べたら美味しいとか。売れています、珍しいですもんね」
この商品は、川端さんが経営する『川端水産』の加工品第一号。リエットは本来、豚肉で作る伝統的な保存食ですが、川端さんは魚で作ることに挑戦しました。レシピは天草市内でフランス料理店を営むシェフに提案・開発協力してもらったものです。
原料の種類は、漁によって変わります。
川端さん「きょうは先ほど獲れたカンパチです、ネリゴと呼んでいます」
かっこよくて品がいい、「今までにない商品」
漁師の川端さんが全て手作業で作る『IWOリエット』には、「あおさベース」や牛深産の「うまみ節ベース」や「トマトベース」の3種類があります。「あおさベース」の作り方を見せてもらいました。
捌いた魚に下味をつけるため、15分ほど塩漬けして火を通します。そこへ、甘みを加えるために炒めたタマネギを投入。更に白ワインで約30分煮込んでベースの出来上がりです。
お次は風味づけ。五和産のあおさなどを入れて細かく刻みながら混ぜ合わせます。
川端さん「漁師だけどちょっとかっこよくて品が良くて、何か今までにないようなものはできないかなと相談した。100点もらうまでに2年くらいかかりましたね」
リエットは「パテ」とは違い、ペースト状ではありません。魚の食感を残すのがポイントです。今回の出来ばえは?
川端さん「OKです、上出来です!」
食べる際は、パンやクラッカーで手軽なおつまみに。また、茹でたパスタに和えてお好みで塩コショウを加えると、簡単なアレンジ料理もできます。
「天草の魚」おいしさ知って
2022年、熊本県商工会が主催する名産品の発掘コンテスト「肥後もっこすのうまかもんグランプリ」でベストセレクション賞に輝いた『IWOリエット』の認知度は徐々に高まり、リピーターも増えています。
川端さん「味は自信を持ってうまいと言えます!」
そんな川端さんが、リエットを通して伝えたい事とは。
川端さん「小さな動きなんですけど、自分が発信することによって、天草の魚は美味しいんだということを全国の人に知ってもらいたいです」
『IWOリエット』は、通販サイトや道の駅などで購入可能です。
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