ことし9月6日で、北海道胆振東部地震から6年が経ちます。当時は大規模な停電「ブラックアウト」が発生しました。

私、HBCアナウンサーの堀内美里は、登山をして、山でごはんを食べるのが趣味です。いろいろな環境で料理を作ってみましたが、山で料理をするときは水や電気がない状況です。

山頂でホットサンド(北海道・黄金山)

「山ごはん」のグッズやアイデアは、災害時にも使えるのではと思い、断水・停電の状況で食事はどう用意するかを考えることにしました。

3月には、「焼き鳥缶」を活用した防災レシピ(https://newsdig.tbs.co.jp/articles/-/1053085)をご紹介しましたが、今回は「水漬けパスタ」に注目しました。

防災の専門家に聞いたポイントと、「水漬けパスタ」のレシピをご紹介します。

停電時でも心と体をほっと

「水漬けパスタ」は、乾麺をあらかじめ水に漬けておくことで、加熱時間を省略・短縮するアイデアです。

一般社団法人「防災安全協会」の事務局長・水口健さんは、「日ごろから買い置きのあるパスタなどの乾麺は、時間をかけてふやかせば、熱湯でゆでる必要がないので、災害時にガスや電気が止まっても調理できます」と話します。

「ゆでるのは乾麺への給水を早くするためなので、時間をかければ火を通さなくても食べられる状態になる」そうです。

半分に折ったパスタと水を食品用保存袋に入れ、約30分置くと、麺がやわらかくなりました

具や味付けにも、常温食材が活用できます。

水口さんは、「停電で冷蔵庫が使えない場合も、ローリングストックしておくことで常温食品が備蓄になります。例として、乾麺、缶詰、レトルト食品、乾燥ネギ、切り干し大根などがあります」と話します。

2018年9月6日の北海道胆振東部地震では、札幌にある私の実家もブラックアウトの影響を受けました。

家屋に影響はなく避難所に行く必要はありませんでしたが、炊飯器や冷蔵庫が使えませんでした。

カップラーメンや菓子パンなど、すぐに食べられるものを探し回りましたが、近所のスーパーは長蛇の列。売りに出されているものの中には、価格が上乗せされているものもありました。

ポータブルのカセットコンロを主につかって、電気が切れた冷蔵庫の中に入っていた食料や、ストックの缶詰、お菓子などを食べました。

どんな状況であっても、生きていくためには食事が必要。

停電時でも心と体をほっとさせる時間を作るために、今回は「水漬けパスタ」「常温食材」「カセットコンロ」を活用したレシピ2選に挑戦します。

水漬けパスタを活用

「水漬けパスタ」は、ガスや水の節約になるのに加えて、麺はまるで生パスタのようなモチモチ食感に変わります!

普段、登山でパスタを作るときにも使うテクニックです。

水漬けパスタの作り方はとてもシンプルで、水に乾燥パスタを漬けるだけです。

放置時間は規定のゆで時間の10倍以上が目安で、3分の早ゆでパスタなら30分以上。

使う水の量は、乾燥パスタの3倍以上が目安ですが、麺が水にしっかり浸れば多少違っても大丈夫でした。

今回紹介するのは、ゆでるのも味付けもひとつのフライパンでできるので、洗い物も少なく便利です。

使った食材は、すべて常温で保存できるものです。

①ほっこり。クリームシチューのパスタ

【材料】(1人前)
・パスタ 100グラム
・水 300ミリリットルほど
・シチューのルウ 1かけ
・乾燥野菜
・大豆ミート

【作り方】
① フライパンに水漬けパスタと水を入れ、沸かす
②水で戻した乾燥野菜と大豆ミートを投入する
③ルウを入れ、溶けたら完成

【ポイント】
乾燥野菜や大豆ミートが水を吸い、水分が早く減りました。底にパスタがこびりついて焦げないように、弱火で混ぜ続けてください。

まろやかな、ほっとする味でした。

調理工程を見ていないスタッフに食べてもらったところ、大豆ミートとは気づかず、肉だと思って「おいしい」と食べてくれました。肉のような弾力もあり、見た目以上にボリューム感のある一品です。

今回は乾燥野菜を使いましたが、停電したときに、冷蔵庫に余っているお好みの野菜を入れるといいと思います。

②イタリアントマトパスタ

【材料】(1人前)
・パスタ 100グラム
・水 300ミリリットルほど
・トマトジュース 1パック
・コンソメ 固形1個
・ツナ缶 1缶
・(お好みで)フライドガーリック

【作り方】

① フライパンに水漬けパスタを水ごと投入し、水分を飛ばすように加熱する
②トマトジュースを入れてかき混ぜる
③ツナ缶とコンソメを入れ、全体になじませたら完成

【ポイント】
・トマトジュースはトマト缶でも代用可能です
・ツナ缶は油ごと入れます

その場にいたスタッフ全員が口を揃えて「おいしい」と言いました。

乾麺から作るよりも麺のモチモチ度はUPしていましたが、味に大きな差は感じられませんでした。

ツナ缶のオイルで、旨味UP。麺もつるつるにコーティングしてくれています。

お好みでフライドガーリックをトッピングすると、味にパンチが出て、さらにおいしくなりました。ガーリックやバジルなど常温保存できる調味料があると、ワンランクアップしたおいしさになります。

アレンジは無限大 ポイントは「好きな味探し」

パスタのレシピがたくさんあるように、「水漬けパスタ」も、アレンジは無限大です。

以前、羊蹄山に登った際は、ミックスナッツを使ったペペロンチーノを作りました。

ただ、このときは漬けた水をすべて鍋に入れた結果、べちゃべちゃになってしまって、味のパンチが弱まってしまいました。

レシピによって、漬けた水をすべて入れたほうがいいかや、加熱時間・水に漬ける時間は変わってくるので、「災害時には水漬けパスタを作ってみよう」ではなく、「普段から一度、試してみよう!」と考えていただくことをおすすめします。

防災安全協会の水口さんは、「備蓄と思うと食べない。常温食材を備えると思うのではなく、好きな味の常温食材を見つけることが大事です」と話します。

水口さんは以前、親子向けの防災食のイベントで、食べない子どもを目にしたといいます。親が「これしかないから食べなさい」と言った場合や、食べ慣れていないため「いつもと違う」と拒否感を示した場合があったそうです。

水口さんは、「食べ慣れておくことが大事です。普段の食卓で、もう一品ほしいときに、レトルト食品を家族で分け合って食べてみるとか、少しずつでもいいので食べてみて、好きな味を見つけてほしいです」と話していました。

さらにアレルギーなどで避難所で出てくるものが食べられない人もいるため、備えておく常温食材は、添加物やアレルギーといった観点でも考えておくべきと指摘します。

今回は、私はカセットコンロや登山用の調理器具があるので加熱ができましたが、火が使えない状況でも、「水漬けパスタ」は食べることができます。水口さんは、「火がない・電気がない状況でも、食事をしないと明日につながらない。市販の和えるだけのパスタソースなども試して、好きな味を見つけてほしい」と勧めていました。

また、「水漬けそうめん」はパスタよりも細くやわらかいので、お年寄りや子どもも食べやすいとも教えてくれました。

災害が起こったときは、いつもと違うことばかりで疲れてしまうと思います。

断水時や停電時でも作れるレシピを、普段の食事や山ごはんで楽しんでおくと、災害時にも食べ慣れた味で、心も体もほっとするかもしれません。

おいしく楽しみながら、考えてみませんか?

◇HBC北海道放送:堀内美里アナウンサー

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