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兵庫県の斎藤知事を巡るパワハラ、おねだり疑惑を調査する百条委員会が5日開かれ、知事本人への2回目の証人尋問が行われました。齋藤知事は、告発文に書かれている疑惑の当事者が人物を特定する調査をした点について聞かれると「問題ない」と回答。告発というより誹謗中傷性の高いものを作成したと感じたので調べるのは大事だとの見解を示しました。守られるべき告発者が守られず命を落とした今回の事案について、過去に運輸業界の闇カルテルを告発した男性は「あってはならないことだ」と憤ります。
内部告発者が守られるにはー。

兵庫県の斎藤元彦知事をめぐっては、今年3月12日、県の元幹部(60)がパワハラや物品の授受についての7つの疑惑を記した文書を県議や報道機関に配布し、匿名で告発しました。これに対し会見で知事はー

兵庫県・斎藤元彦 知事:「事実無根の内容が多々含まれている。ありもしないことを縷々並べた内容で。うそ八百含めて文書を作って流す行為は公務員として失格です」

3月27日 知事定例会見

元幹部は、4月、県の公益通報制度を利用して疑惑を通報しました。県は、5月に告発した人物を元幹部だと特定し、「文書の革新的な部分が事実ではない」として元県幹部を停職3か月の懲戒処分としました。

その後、告発内容には一部事実も含まれていたとして、県議会が百条委員会の設置を決定。しかし、7月、百条委員会で証言する予定だった元幹部が死亡しているのが見つかりました。

告発者が死亡したことで、見直しを求める声が高まっているのが「公益通報者保護法」です。

見直し求める声高まる「公益通報者保護法」

「公益通報」とは、労働者などが勤務先などの不正行為を、組織内の通報窓口や行政機関、報道機関に通報することです。企業の不祥事などは内部通報が発端となり明るみに出ることが多いことから、正当な行為として保護されるべきとして「公益通報者保護法」で定められています。

具体的には、公益通報したことを理由に、事業者が解雇などの不利益な取扱いをすることを禁止しているほか、通報者を探したり特定したりすることも禁じています。

兵庫県は元幹部の告発を「公益通報」と認めていませんが、8月7日に臨時で開かれた兵庫県市長会では、県が告発を「公益通報」として対応しなかったことに対し厳しい指摘が相次ぎました。

「公益通報者保護法」制定のきっかけを作った人物が富山県にいます。

“憤る”富山のホイッスルブロワー

今から50年前に運輸業界の違法な闇カルテルを告発し、約30年にわたって会社側から「報復人事」を受けた富山県高岡市の串岡弘昭(77)さんです。串岡さんは、兵庫県の元幹部の「公益通報」を巡る問題について「あってはならないこと」と憤りを隠しません。

串岡弘昭さん:「死をもってしても自分が真実なんだということを訴えざるを得ないようにまで追い詰めている知事、そして、知事の周りにいる人たちも大きな問題がある」

串岡弘昭さん:「公益通報かどうかは知事が決めることじゃない。公益通報はまだまだ組織を守るだけにしか機能していない。現在の法律は甚だ不十分なものですから、(告発した)本人を救う場にもなってない。それは同時に公益通報なんて行うべきじゃないということにしか働かない」

「私は30年間一切昇格もなく、草刈りとか雑用だけをさせられる立場になったものですから」と話す串岡さん。

串岡さんは、2002年、内部告発をしたことで不当な扱いを受けたとして当時勤務していたトナミ運輸を相手に損害賠償などを求めて提訴。

裁判では「内部告発は公益性があり法的な保護に値する」と告発の正当性が認められ、会社による不当な扱いは「報復人事である」と認定されました。2006年、串岡さんと会社側の和解が成立しています。

串岡さんは、兵庫県の「公益通報」について、報道機関などに告発した人物が元幹部と特定され、停職3か月の処分を受けたことを特に問題視しています。

串岡弘昭さん:「通報を受け付けた窓口の人は通報者の氏名を明らかにしたり、伝えてはいけない。告発者がばれる恐れがあれば、不正や違法を訴える人は恐くてできなくなってしまう」

専門家「通報者保護の観点を失っている

「公益通報者保護制度」に詳しい淑徳大学副学長の日野勝吾さんは、今回の兵庫県知事を巡る問題については初動の対応を誤った最悪のケースだとし、「制度の根幹を揺るがす出来事」だと指摘します。

淑徳大学副学長 日野勝吾教授:「公益通報の制度の根幹を揺るがす事件だなというふうにまずは思っています。今回のケースを見ると、通報者を探していく人事課の内部調査を先行させて、処分をしてしまったという点は通報者保護の観点を失っていると言わざるを得ないと思います」

2022年6月に施行された改正公益通報者保護法では、組織の不正を内部から通報した人を守るために、通報者の情報を漏らした担当者には30万円以下の罰金という刑事罰が科されたほか、通報者が解雇や降格など不利益な扱いを受けた場合は行為者を懲戒処分とするなど、通報者の保護が強化されました。しかしー

淑徳大学副学長 日野勝吾教授:「不利益な取り扱いに対する行政措置というものがありませんから。もう少し法律の実効性を高めていくこと。もっと言うと、こういった不利益があった場合は罰則を付けるというようなレベルまで求めないと」

日野教授は公益通報者保護法の抜本的な見直しが必要だとしています。今回のように組織のトップが対象となる通報もあるという前提で、内部だけでなく外部の窓口もしっかりと整備すべきだと指摘します。

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