現代俳句の第一人者で東京新聞「平和の俳句」の生みの親である金子兜太さんのドキュメンタリー「天地悠々 兜太・俳句の一本道」(2019年)が9月10日から東京都目黒区の都写真美術館ホールで上映される。生き方や平和の俳句への思いなどがたっぷり語られ、亡くなる直前の映像も。河邑厚徳監督は「どこか遺言的で、語り切ってくれたようだった」と語る。(石原真樹)

「天地悠々 兜太・俳句の一本道」から=©ピクチャーズネットワーク株式会社

◆兜太さんの逝去前1年半の姿を記録

 監督は兜太さんが2018年2月に亡くなる1年半ほど前に撮影を始め、月に1度のペースで兜太さんの自宅などに通った。映画は兜太さんの句を織り交ぜつつ、人生の末路への考えや俳句への思い、戦時中に赴任したトラック島でのできごとなどを独特の表現で語る兜太さんの姿を映す。  2018年2月6日、河邑監督が本紙「平和の俳句」の入選句を詠み上げ、兜太さんが「うーん」「なるほど」と相づちを打つ場面がある。批評するでもなく、ただ静かに句をかみしめる兜太さん。「俳句は平和の力になるか」との問いに「平和と俳句が結びつかないと一切考えたことがない」ときっぱり答える。

◆監督「兜太さんからの最後のメッセージを…」

映画「天地悠々 兜太・俳句の一本道」について話す河邑厚徳監督=東京都世田谷区で

 「俳句を詠める、日常生活が続いていることは平和である、ということなのだと思う」と監督は力を込める。兜太さんはこの撮影の2週間後に亡くなった。「もう少しいろいろ聞きたかった。最後のメッセージをみなさんに伝えられるのは意味があったのかな」  敬老の日に合わせた特集上映で、料理家・作家の辰巳芳子さんを追った「天のしずく 辰巳芳子“いのちのスープ”」(2012年)なども上映。「自分もこういう年の取り方をしたいと思える人を記録してきた。映像ならではの余白も味わってもらえたら」。連日3作品上映、9月23日まで(17日は休映)。 

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