3階の高さからゆでタマゴを落としても割れないようするには?

慶應大学の学生や中学生と一緒に、そんな課題を考えるユニークな授業が鹿児島県霧島市の県立福山高校で行われました。

福山高校の教諭、折田真一さん(45)。この取り組みの仕掛け人です。出身校・慶応義塾大学SFC研究所の上席所員としての肩書も持っています。

おととしから文部科学省が高校のカリキュラムに導入した「総合的な探究の時間」。生徒が自分で考えて課題を見つけ、解決していくための力を育てるのが目的です。

福山高校ではこの時間を使って、福山みらい創業塾と題し、身近なことや地域の課題をそれぞれ研究しています。

(大学生)「目標は具体的にしたほうがいいよ。何時間睡眠とるとか」

(生徒)「朝からばたばたしちゃうんで、ゆっくりおきてゆっくり準備したい」

生徒と話しているのは、慶應義塾大学の学生たち。週に1度、インターネットの会議を中心に、1・2年生62人の相談に乗っています。年に1回、高校を訪れていて、きのうは8人が訪問。リアルで会うのは初めてです。

(大学生)「研究テーマを日常生活の中で落とし込んでいって、どういう学生生活を送っていけばいいかを自分で想像してもらえればいいな」

地元・福山の良さを歌にして発信したいという生徒は、作曲の進め方を相談しました。

(生徒)「最初から盛り上げるのか、後から盛り上げるかでだいぶ変わってくる」

アドバイスではなく問いかけを意識し、高校生自身に考えてもらいます。

(大学生)「今のところその方向性は考えている?」
(生徒)「サビから入ろうかなと」

(生徒)「話しやすくて頼りになる」

今月4日は隣の曽於市から、大隅中学校の3年生88人も訪れました。

高校生と中学生が8グループで取り組むのが、「エッグドロップ」という課題。

2枚の紙とセロハンテープを材料に、校舎の3階からゆでタマゴを落としても割れない方法を考えます。ネットで参考になる情報を探し、アイデアを話し合いながら進めます。

(生徒たち)「3,2,1」「あ~割れてる!」
(大学生)「役割分担したらいいかもね」

教師や大学生は見守り役。大切なのは「自分たちで考えること」です。

(生徒)「どうなるかな…」(円錐にタマゴ入れて爆笑)
「もうちょっと細くしても良さそうじゃない?」

挑戦は1グループ2回まで。落下から15秒以内にタマゴを取り出すのもルールで、少しのヒビでも「失敗」です。

トゲトゲ型で挑戦したグループは、駆け寄って引っ張った拍子にタマゴが破裂、大爆笑。

羽根をつけて挑戦したグループは…
(中学生)「割れてないです!」「おお~!成功」
(中学生)「この羽根で空気抵抗を増やしたっていうのと、(紙を折り曲げて)クッションを作ったところです」

(折田先生)「たとえばおもり付けたら安定して落ちるとか、問題がなぜ発生しているのかを考えて…挑戦してください!」「はい!」

定員240人には開きがありますが、福山高校の全生徒数はおととしは75人、去年は76人、ことしは86人に増えました。タマゴを割れないようにする先の目的が、この取り組みにあります。

(折田先生)「AIに聞いたら正しいやり方が出てくる。それやれば良いので簡単じゃないですか、という生徒がいたんです。でも実際やると全然違う。
実際に行動に移して問題を見つけて改善していく。それを何回もやっていくのが将来の社会を導く人材になる。そういう思いをこめて、この福山みらい創業塾がある」

(中学生)「めっちゃ高校楽しそうだと思います」

(中学生)「(大学生も高校生も)優しくて声かけてくれたので、みんなで話し合って、成功できて良かったです」

福山みらい創業塾では、こうした体験だけでなく、地域や企業などが抱える実際の課題の解決策を考える時間もあります。未来の子どもたちを育て、高校の魅力を高める取り組みが続きます。

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