今、漁港が“アツい”んです。思わず行きたくなる“海業(うみぎょう)”と呼ばれる、新たな港の活用法が注目されています。

北海道南部の港で養殖されたサーモンです。


「とても脂が乗っている。おいしい」

北海道東部の港では、クルーズ船で観光客を呼び込みます。

漁業関係者
「(日中は使われない)ウニの密漁監視船”はぼまい丸”を使い、北方領土の間近までクルーズをする」

漁業者の高齢化が進み、不漁で漁獲量が落ち込む中、海や漁村の魅力を活かして、人を呼び込む“海業(うみぎょう)”が、全国で広がっています。

地域の活性化を目指す、新たな漁港の活用法を、もうひとホリします。

水揚げされたばかりのキンキに、花咲ガニ。根室の歯舞漁港です。2022年、約80億円をかけて防災機能を兼ね備えた、複合施設を開業しました。

 歯舞漁業協同組合 伊藤司 常務理事
「ここが一般客が見学できるスペースで、ここで競りが行われます」「客の声が聞こえないように、上にスピーカーがついていて、競り人と買受人の声が聞ける」

歯舞漁業協同組合 小倉啓一 代表理事
「見せる漁業とか、見られる漁業とか、体験してもらう漁業とか…違った観点からいろいろな人が入ってきたら、漁業にも興味を持ってもらえる」

 歯舞漁協が力を入れているのが“体験の提供“”です。

修学旅行生などを、漁業者の自宅で受け入れる”渚泊(なぎさはく)”を実施。宿泊費や滞在費はかからず、漁師の暮らしぶりを知ることができます。

 こんな取り組みもあります。普段は乗船することができない、ウニの“密漁監視船”でクルーズです。

納沙布岬周辺の海域を巡るツアーは、珍しい野鳥などが見られると口コミで広がり、特にインバウンドから人気を集めています。

こうした“体験型”の取り組みで、今年はコロナ前の約2倍となる約1,600人が、歯舞漁港を訪れる見込みです。

 注目の“海業”は、北海道南部の八雲町、日本海側にある熊石漁港でも…。

二海サーモン 高橋聖治社長
「二海サーモンの養殖事業をやっています」

八雲町は2019年、北海道内では初となる、トラウトサーモンの海面養殖事業をスタートさせました。

八雲町は、日本海と太平洋という、2つの海に面していることから、ブランド名は『北海道二海(ふたみ)サーモン』としました。

八雲町サーモン推進室 青山智哉さん
「こちら“養成池”というんですけれど、1つの池で300平方メートルあります」

 淡水の池で、12月ごろに卵をふ化させ、1年で約700グラムまで成長させます。

そのあとは、漁港にある生け簀に移動させ、海水で育てます。一部は、使われなくなったアワビの養殖場を再利用しています。

二海サーモン 高橋聖治 社長
「淡水で育てると3年から4年(かかるが)、稚魚のうちに海水に入れると、6か月で(出荷)できる」

 二海(ふたみ)サーモンです。ふ化から、わずか1年半で、3キロ前後にまで成長します。

今年の水揚げは約44トン。5年間で最も多くなりました。

二海サーモンは、ふるさと納税の返礼品にもなっています。


「きれいですよね」

客「脂が乗っています。とてもおいしい」

寿し処かきた 垣田 篤 店長
「二海サーモンの脂乗りと色合いは、ほかのサーモンにはないものと思う。(町の名物が増えるのは)喜ばしいこと、まだまだ盛り上がってくれればいい」

 熊石地区の漁獲量は、主力のスケトウダラなどが落ち込み、10年間で3分の1以下に…。

安定して水揚げでき、全国的に人気が高いサーモンの養殖で、地域の活性化をはかる狙いです。

しかし、いま、養殖に直接関わっているスタッフは3人だけ。今後、どう拡大していくかが課題です。

二海サーモン 高橋聖治社長
「(養殖は)大きくすればするほど、いい仕事。だけど若い人が入ってこない。俺たちも望んでいるところはそこ」

堀啓知キャスター)
船に乗らない「育てる漁業」、今後若い人の参入も見込めるかもしれませんし、持続可能な漁業といえるかもしれませんね。

森田絹子キャスター)
あらためて“海業(うみぎょう)”とは何かをまとめました。

水産庁が推進する“海業”は、地域資源の価値や魅力を活用して、地域のにぎわい、雇用、所得を生み出すのが狙いです。

 この“海業”、成功するカギはどこにあるのか?東京海洋大学の工藤貴史教授に取材しました。

・漁業、水産業、飲食業、行政などが連携して、海業としての取り組みを進めていくこと。

・採れたての魚が地元の食堂で食べられるなど、漁業と海業の相乗効果を狙うこと。

・最新の情報をスマホ・アプリなどで発信すること。

・漁業や海業に興味がある人を受け入れ、移住などの定住人口の増加につなげること。

…などが挙げられるということです。

一過性の取り組みとしてだけではなく、長い目で見て、地元の漁業の活性化につながるかどうか、まさに持続可能な取り組みとして、今後の展開が注目されます。

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