8月8日に「南海トラフ地震臨時情報」が発表されました。
「巨大地震への注意が必要」という初めて出された情報を、長野県民や行政はどう受け止めどう行動したのでしょうか。


綿半スーパーセンター伊那店 進藤晶宏副店長:
「商品が売り場からなくなってしまって・・・」

綿半スーパーセンター伊那店。

南海トラフの臨時情報が発表されてから、水を買い求める客が多く訪れ、対応に追われました。

綿半スーパーセンター伊那店 進藤晶宏副店長:
「水に関しては、かなり減ってしまって、本来であればパレットは3段で積み上がっているんですけど、注意期間の1週間、水はとっかえひっかえというか品出しし続けていた状態でした」

品切れになったものもあったそうです。

進藤副店長:
「突っ張り棒や耐震マットは売り場からなくなってしまって、凄い反響だったなと感じました」

店の8月の防災関連商品の売れ行きは、2023年と比べて300%に跳ね上がりました。

上原記者:
「食料品も扱うこの店舗では、地震から3週間たった現在も保存食コーナーで欠品が続いていて、消費者の関心の高さが伺えます」

長期保存ができる乾パンや、水やお湯を注ぐだけで食べられるご飯などが、今も売れ続けています。

今回の「南海トラフ臨時情報」とは改めて、どんな情報だったのか。

8月8日、午後4時43分ごろ、宮崎県日向灘を震源とするマグニチュード7.1、震度6弱の地震が発生しました。

気象庁は午後5時、「南海トラフ地震臨時情報」を運用が始まって以来、初めて発表。

専門家からなる検討会を臨時招集して、巨大地震に繋がる可能性があるか調査を始めました。


このとき発表されたのが「南海トラフ地震臨時情報」の「調査中」。

2時間後をめどに「巨大地震警戒」、「巨大地震注意」、「調査終了」のいずれかが発表されます。


万が一、南海トラフ地震が発生した場合、県内では、飯田市、伊那市などで震度6強。

死者は130人から180人。

全壊・焼失する建物は2200~2300棟に上ると想定されています。

「巨大地震警戒」の場合、マグニチュード8クラス以上の地震が1週間以内に発生する頻度は十数回に1回程度。

「巨大地震注意」の場合は数百回に1回程度とされていますが・・・

気象庁地震火山部 束田進也(つかだ・しんや)地震火山技術・調査課長:
「南海トラフ地震の想定震源域では、新たな大規模地震の発生の可能性が平常時と比べて相対的に高まっていると考えられます」



気象庁は「巨大地震注意」を発表し、1週間、地震への備えを改めて確認することなどを呼びかけました。

県民は:
「最初何だったのって、もう来ると思って地震が、びくびくしていた」
県民:
「よくわからなかった」

一方、行政は臨時情報の発表を受け、県や対策推進地域の市町村では、警戒本部が設置され、情報収集や住民への注意や呼びかけが行われました。

県は初めて出される情報の理解を広めるのに課題を感じたと受け止めています。


危機管理部 前沢直隆部長:
「よりわかりやすくなるかということをちょっと議論をいたしましたけれども」
「まだまだ臨時情報の注意とか警戒っていうものに対する長野県民だけではないと思いますが皆さん、やっぱり理解がなかなか深まっていなかったのかなっていう気がします。どこまで浸透させるかってことが(課題で)あるかなと思います」

飯田市ではあるトラブルが起きていました。

本来置かれるはずの、警戒本部が設置されませんでした。

飯田市危機管理部 岡本佳宏部長:
「職員参集の計画の中で警戒態勢をとって警戒本部の準備という段階だったので、計画に沿って進めていきました」

地域防災計画の中で、「巨大地震注意」が発表された場合の対応として、あるページには「警戒本部を設置する」、またあるページには「準備をする」と異なる記述が混在していました。


飯田市危機管理部 岡本佳宏部長:
「本当は間違いがあってはいけないんですけど、今後市の計画を修正しなければならないという認識のもとで今回は動いていた」

県民そして、行政にも戸惑いや、準備しているつもりでも不備があったということがわかりました。

一方で、買占めなど目立った混乱はほとんどありませんでした。



今後、この情報とどう向き合っていけばいいのか専門家に聞きました。

松本大学 入江(いりえ)さやか教授:
「この情報は正直とても難しい説明のしづらい情報だと思う」

臨時情報の社会的な影響について研究してきた松本大学の入江さやか教授は、情報の意味を正しく理解している人はまだ少ないのが現状だと話します。

入江教授:
「地震予知ではないということ」
「起きるかもしれないし、起きないかもしれない。不確実性をはらんでいるのが臨時情報の大事なところ」

2011年の東日本大震災をきっかけに議論が進んだ「南海トラフ地震臨時情報」は、現在の地震学でできうる範囲での発生予測で、大地震が必ず発生するという予知ではないと知っておくことが大切だとします。

その上で、今回のような場合も、「空振り」ではなく「素振り」と捉えることが重要だと指摘します。


入江教授:
「結果的には1週間以内に巨大地震は起きなかったんですけど、これは空振りじゃないんです。皆さん今回水を買ったり、家具の固定を確認されたかと思う。そういったアクションは素振りなんです。空振りじゃなくて今回素振りをしたと思ってください」
「ああしろ、こうしろというのは国や自治体は言ってくれない」
「どういう対応をとるかは自分自身で考えなければいけない情報なんです」

次の地震に備えた動きも加速しているようです。

阿智村の昼神温泉。

村と温泉宿などが共同で水や食料を備蓄して、災害への備えを進めています。

阿智村消防防災係 牛山敦志さん:
「水とごはんなどの食べ物が入っていて、500人程度ですかね」

およそ30世帯の村民向けで、1週間分を見込んでいるということです。

阿智村消防防災係 牛山敦志さん:
「旅館の方には布団などいろんなものがあると思いますので、うまく連携とって避難させてもらったりお互いに協力してやっていければいいと思っています」

一方、駒ヶ根市では、南海トラフ地震を想定した訓練が行われました。

火災が発生した際の対応や、パンケーキの炊き出し訓練も。

住民の防災意識も高まっているようです。

住民:
「子どもたちがこの地区に住んでいて、子どもたちと参加したいねって参加した」
住民:
「普段から防災の物なかったが、防災のものを買ったり、防災の意識高まっている。実りある訓練になった」

今後30年以内に70%から80%の確率で発生するという予測に変りはない南海トラフ地震。

今、自分ができることを再確認し、備えていく必要があります。

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