ベトナムと新潟の経済交流について、新潟からベトナムに進出している企業やビジネスマッチングの取り組みの観点から記します。

新潟県新発田市の精密機械メーカー・TOWAが、ベトナムに進出したのは今から28年前。県内企業のベトナム進出のさきがけとなりました。

ベトナム最大の都市ホーチミンから南西へ130kmのところにあるビンロン省に、4つ目の工場となる「サザンスター工場」があります。この工場では、ミシンのボビンケースやミクロン精度の加工技術を使った自動車部品のほか、圧力制御バルブなどを生産しています。

【TOWA JAPAN 渡邉豊社長】
「ビンロン省は交通の要所。ロジスティクスの面で優れている。ホーチミンや日本に技能実習生を派遣している土地で、人を採りやすい」

渡邉社長は、新潟ベトナム協会や新潟ベトナム県人会の会長も務めています。
2023年に新潟県とビンロン省との間で『交流協力に関する覚書』を交わすきっかけとなったのは、渡邉社長からの働きかけが大きかったと言われています。

新潟県知事らの訪問団がベトナムを回っている最中、株と為替が乱高下しました。
海外で取引をする企業には、大きな影響を及ぼしかねません。

【TOWA JAPAN 渡邉豊社長】
「急激な円高が一番困るんですよ。高いなら高いなりに、安いなら安いなりに、一定して安定していてくれれば仕事ができるんですが、為替が上下にいっていると、経営計画も立てにくいし、お客さんも買い控えしますね」

省都・ビンロン市からさらに南へ30kmのところにある、中央直轄市のカントー市。
加工用調味料や食品素材の製造販売を行っているタケショー(本社・新潟市北区)は2年前から、人口125万人のこの地に子会社・タケショーフードベトナムの工場を稼働させています。

タケショーの田中利直社長は、大学でベトナムの歴史を学んで以来ベトナムが好きになり、いつかベトナムに進出したいと考えていました。
そしてカントー市に進出後、農業・水産・環境の分野でベトナム国内トップクラスを誇る「カントー大学」とつながることができました。

「カントーに来てカントー大学と出会うことができた。もともと問屋卸売り業だったのが、今はどちらかというと製造業、それも研究科発をベースとした製造業にシフトしつつある。会社全体がそういう形態になれたのも、カント―大学のおかげ」

最近では、捨てられていたエビの頭や殻を使った調味料用粉末の製造なども手がけています。メコンデルタの素材を活かした商品を世界に売り出すのが、田中社長の夢です。

【ウオショク 宇尾野隆社長】
「ニッチですけれど、付加価値のある製品を作っていてすごいなと思いましたよ。メコンデルタは、食料の宝庫なんでしょうね」

ベトナム・ハノイ空港からさらに車で3時間の所にあるタインホア省。
人口は370万人で、15世紀の初めに作られた「ホー王朝の城塞」が、2011年には世界文化遺産に登録されています。

タインホア省は、ベトナム国内最大のコメの産地で、果物の栽培も盛ん。
ベトナム政府から、地方間交流の相手としてタインホア省が提案され、2023年11月に新潟県と『交流協力に関する覚書』を結びました。

タインホア省にとって、外国の地方とこのような交流協定を交わすのは、新潟県が初めてです。

タインホアのホテルでは、新潟県内の企業とベトナムの企業が参加して、自社紹介のプレゼンと意見交換会が開かれました。いわゆるビジネスマッチングです。
会場には新潟県産品も展示され、具体的な商談も行われました。

【新潟ベトナム協会会長 渡邉豊さん(TOWA JAPAN社長)】
「都会地であるホーチミンやハノイの方は、競争がきつ過ぎる。これから進出するのであれば“地方”に出るべき。地方もどんどん発展している。しかし、ベトナムやその“地方”を見ているのは、新潟県だけではない。日本だけでもない。ですから、早めに決断して早めに動くことが大切」

新潟県のベトナム訪問団は最後に、ハノイ空港の近くの工業団地にある「ベトナム日本精機」を訪問しました。2007年に設立されたこの工場では、二輪車用の速度メーターやセンサーを、主にベトナムにあるヤマハやスズキなどのバイクメーカーに供給しています。

ベトナムのバイクの需要は、年間300万台。
「ベトナム日本精機」では250~260万台分を製造していて、ベトナムのバイクの10台に8台は、この工場で作られたメーターがついているのです。
またタイにも輸出をしており、この工場はアセアンの重要拠点にもなっています。

【日本精機 佐藤浩一社長】
「二輪メーターの一番の稼ぎ頭。ベトナムの人は従順だし、目指すところも理解してくれているのでやりやすく工賃も安い。手先が器用なのできれいにものを作る」

今回で4回目となった花角英世新潟県知事のベトナム訪問。
人材・経済・農業分野と、多岐にわたる交流内容となりました。
移動時間も長く厳しいスケジュールでしたが、そこまでしても、県のトップがベトナムを訪問する理由が新潟県にはあるのです。

【新潟県 花角英世知事】
「いや~、本当に疲れましたね、ハッキリ言って。いろいろな行事が続きました」

新潟県とベトナムとの交流は、地道な努力によって着実に進んでいます。

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