普段なら捨ててしまう「タマゴの殻」に60年に渡って絵を描き続ける男性がいます。きっかけは少年時代の忘れられない出来事。男性は、ワークショップを通じてこどもたちに作り方だけでなく自身の経験から得た学びも伝えています。
「えっぐおじさん」のワークショップ
8月6日、仙台市泉区の児童センターで、真剣な表情で筆を動かすこどもたち。
取組んでいたのはタマゴの殻に絵を描く「エッグクラフト」です。こどもに教えている男性は、宮城県名取市の菊地克三さん(73)です。「えっぐおじさん」の愛称で県内外でエッグクラフトのワークショップを開いています。
菊地克三さん:
「こどもたちの笑顔を見るときですね、それが一番うれしい」
きっかけは作品展で金賞、よろこんだ母親は…
初めてタマゴの殻に絵を描いたのは中学2年生の時。雑誌に載っていた人形を自分なりに真似て作ったところ学校の作品展で金賞に選ばれました。
菊地克三さん:
「それまでほめるところなかった。何をやってもダメでね。母がものすごくほめてこの時とばかりに喜んで隣近所に触れ回って歩いた。その姿を見て、自分にも人にほめられるものがあったんだなと」
大人になっても趣味として独学のエッグクラフトを作り続けてきました。いまは自宅のそばにアトリエを構えています。
試行錯誤からできた作品は…
作り始めて60年、エッグクラフト用の殻は試行錯誤を重ねました。
ケースの中にはたくさんのタマゴの殻が…。
菊地克三さん:
「中身は空洞じゃない。ウレタンとモルタルを詰めている。風とかで飛ばないように強く握っても壊れないように工夫した」
出来上がった作品です。
菊地克三さん:
「完成形がこれ。招き猫でございます。この球面に絵を描く。何とも言えない、平面でないところに書く心地よさがある。捨てられるタマゴの殻のようなゴミでも創意工夫することで蘇る。宝物になる」
これまでに作ったのは2万点以上。
菊地克三さん:
「これはダチョウのタマゴ。頑丈ですよ結構。松竹梅、お正月に飾る床の間なんかに飾ると映える」
商社を辞めてエッグクラフト普及へ
子どもの頃から続けてきたエッグクラフトの魅力を広めたいと菊地さんは58歳で、勤めていた商社を退職しました。
菊地克三さん:
「妻からは何をお父さん言ってるの、夢みたいなことと。猛反対でしたね。(最初は)物置を改造した小さな部屋で。近所の子どもたちが、学校帰りに寄って行ったりしました」
口コミで徐々に評判となり学校行事やショッピングモール、さらに県外のイベントにも招かれるように。東日本大震災の被災地にも足を運びました。ワークショップに参加したある親子からの言葉が忘れられないと言います。
菊地克三さん:
「お地蔵さんを作って、震災で犠牲になったおばあちゃんの仏壇に飾ったんだそうです。悲しい気持ちがすっと消えましたというメールをもらい感動した」
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