ブラジル政府は先月、20代の女性2人が「オロプーシェウイルス」感染により死亡したと発表しました。胎児の死亡例も報告されている「オロプーシェ熱」が、今後世界に広がっていくことが懸念されています。専門家は「日本でも感染が広がる可能性はある」と言います。

長崎大学 高度感染症研究センター 安田二朗教授:
「『オロプーシェ熱』はこれまで中南米で散発的な流行が起きていましたが、今年に入って感染が広がっています。今年5月にはキューバ公衆衛生省が発生を報告したほか、ブラジルでは死者も出ています。しかも20代の基礎疾患のない女性2人が亡くなっている。そしてジカ熱の時と同じように胎児の死亡例というのも今、何例かブラジルで報告されています」

【オロプーシェ熱とは】(国立感染症研究所HPより)
中南米で蔓延している熱性疾患で、オロプーシェウイルスに感染することにより発症する。オロプーシェウイルスは「節足動物媒介性ウイルス」であり、主な媒介昆虫はヌカカ(ハエ目の微小昆虫)である。

1955年にトリニダード・トバゴの発熱患者から分離・同定された。以降、中南米全域でこれまでに50万人以上がオロプーシェウイルスに感染したと推定されている。

2024年にはキューバでも発生し、イタリアでもキューバからの輸入症例が報告された。これはヨーロッパで初めてのオロプーシェウイルスによる輸入症例であった。

オロプーシェ熱に対するワクチンや特異的な抗ウイルス薬等はない。

安田教授:
「オロプーシェ自体はそこまで重篤な感染症ではないんですけれども、やはり妊婦が感染したり、基礎疾患を持っていない20代の若い女性が2人亡くなっていることもあって、今ブラジルでは非常に問題となっている感染症です」

ー日本で拡大する恐れは?
安田教授:
「あります。オロプーシェウイルスは、日本にも普通にいる『ヌカカ』や『蚊』が媒介する『節足動物媒介性』のウイルス感染症です。ジカ熱などと一緒ですね」

「日本の『蚊』でこのウイルスが増えるかは現時点ではわかりませんが、ウイルスを持った『ヌカカ』や『蚊』が入ってくるとか、感染者が入ってきて増える可能性はあると思っています」

「2014年に東京の代々木公園で『蚊』に刺された10代の女性から『デング熱』感染が広がり、最終的に都内で100人を超える患者が報告されたことがありましたが、そういうことにならないとは限らない」

「WHOも含めて注視していて、ブラジル政府も今、対応を急いでいるところです」

【オロプーシェ熱】(国立感染症研究所HPより)
オロプーシェ熱の一般的な症状は、発熱、頭痛、倦怠感、関節痛、筋肉痛等をともなう急性熱性疾患であり、その臨床症状は多くの場合2~7日間で改善する。潜伏期間はこれまでの報告から、4~8日程度(3〜12日の範囲)とされている。まれに髄膜炎や脳炎を発症するが、公式に確認された死亡例は報告されていない。オロプーシェウイルスに感染するリスクを減らす主な手段は、吸血昆虫に吸血されることを避けることである。

【長崎大学 安田二朗教授】
「新興感染症」の研究と治療薬開発が専門。バイオテロ対策等としてのウイルス・細菌の検知システム開発で2014年には文部科学大臣表彰科学技術賞受賞。「ブラジルにおける新興・再興感染症制御研究の推進」が日本医療研究開発機構(AMED)に採択されたことを受け、長崎大学が2024年ブラジルに設置した高度感染症研究センターも率いる。

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