何でも高いこのご時世、子どもにとって「駄菓子屋さん」は、数十円の単位でお菓子が買える夢の場所。
今、名古屋のある商店街で、現れたり消えたりする駄菓子屋さんが、子どもたちの間で話題になっています。店そのものが“かくれんぼ”をする神出鬼没の不思議な駄菓子屋さんに密着しました。
商店街の空き店舗に出現 幻の駄菓子屋さんを探して…
名古屋市南区にある「内田橋商店街」。昔は賑わっていましたが、今は40軒あった店の約半数が空き店舗になっています。
(地元の人)
「シャッター街というか、そういう風になってしまった」
「あの頃に比べたら、子どもの数は10分の1ぐらいですね」
閉じられたシャッターが目立つ商店街ですが、この夏、ある小さな駄菓子屋さんが、たくさんの子どもたちでにぎわっています。
場所どこ?小学校のプールで聞きつけて…
(女の子)
「友達がオススメしてくれた。木曜日だけしかやっていないから、ちょっと不思議」
(男の子のお父さん)
「午前中に小学校のプールに行って、そこで息子がウワサを聞きつけてきたらしい。幻の駄菓子屋さんがあると言って、ずっとグルグルと探していた」
幻の駄菓子屋さんの名前は「スナックかくれんぼ」。店をつくったのは、55歳の横井れいさん。ニックネームは「れいちゃん」です。
(スナックかくれんぼ店主・横井れいさん)
「内田橋商店街の中で、営業できる場所に移動していくので、場所が変わる。だから、かくれんぼです」
この日店が出現した場所は、かつてコインランドリーだった空き店舗。地元商店街組合の協力で、相場の30分の1程度の格安で貸してもらっています。
“当たり”1枚で…10円菓子を10個も!
横井さん一押しのお菓子は「ミルク煎餅」(9枚入り30円)。
戦後間もない頃から70年以上売っているお菓子で、練乳やジャムを塗って食べるのがオススメとのこと。
一番人気は、ラムネと一緒にくじが入った「サッカースクラッチ」(10円 くじ付き)。商品は子どもが自分で計算できるように、全て10円単位です。
はずれが続いた後、ついに当たりが出て、子どもたちは大喜び。当たり1枚で、店の10円菓子10個と交換ができます。
(子ども)
「あっ!勝った!ブラジルに勝った!」
(お父さん)
「もう1個もらえるとかじゃなくて、100円分(10個)もらえるの?」
横井さんが大切にしているのは、コンビニやショッピングモールとは違う、“距離の近い”にぎわいです。
「地域のつながりを」 店主の本業は名古屋市職員
(スナックかくれんぼ店主・横井れいさん)
「顔の見える関係性とか、近い人と繋がることとかが、なかなか希薄になっていて、できていない。町にそんな拠点を作りたかった」
実は横井さんの本業は、名古屋市役所の地域振興課に勤める嘱託職員。
地域のつながりを強くするために思いついたのが、駄菓子屋さんだったといいます。
(名古屋市役所地域振興課・横井れいさん)
「地域のために何かしたいという思いもあるけれど、なかなかそのきっかけがない。そのきっかけづくりの一環として、何か自分でやれるものはないかと思った時に、駄菓子屋さんをやってみようと」
商店街のどこかに”かくれんぼ”中 楽しんで探して
次の木曜日。内田橋商店街に行ってみると、以前の旧コインランドリーには店がなくなっていました。
入口には「かくれんぼ中 内田橋商店街の中を探してみてね」と書かれた張り紙が。
子どもたちは、駄菓子屋さんを探して商店街の中を歩き回ります。捜索開始から5分後、駄菓子屋さんを発見!
この日は、かつて洋服店だった空き店舗の中でした。昔、どんな店があったのかを知ってもらい、地域に親しんでもらうのも横井さんの大きな狙いです。
(子ども)
「友達としかしゃべったことがないから、(大人と話せて)うれしい。れいちゃんは優しい」
(スナックかくれんぼ店主・横井れいさん)
「彼らが大きくなった時に『地域って楽しかったな』と思ってくれて、子どもたち自身が地域で楽しい事をしたいと思ってくれたら、すごくうれしいです」
商店街のどこかに現れては消える駄菓子屋さん。この夏、子どもたちを、お菓子とかくれんぼで楽しませています。
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