元日に発生した能登半島地震以降、新潟市西区の一部では『避難指示』が今も継続していますが、解除の時期が見通せないために、対象エリアの住民や事業所は、再建を進めたくても進められないもどかしさを抱えています。

新潟市西区の県道16号沿いには傾いたままの建物が残され、危険を示すパイロンが並ぶエリアがあります。大野地区の一部では、今も避難指示が続いているのです。

西区の2か所に事務所を構えながら車の販売などを手掛ける八幡雅史さん(39歳)の自動車販売店『soleede』も、避難指示エリアの中にあるため地震後の営業再開のめどが立っていません。

「半年前から実質何もしていないような状況ですね…」
「ここは地面が隆起して、こんな感じでアスファルトが全部割れてしまった」

地震と液状化の影響で地面が隆起して建物も傾き、建物の修復を始められないでいるのです。

「手を着けられない理由は…、擁壁と壁とこの辺りのところが解決しないと、この平地の工事が進められない」

建物の修復を始められないでいる原因は、店の裏にある「擁壁(ようへき)=土留め」にありました。

このエリアはJR越後線が走る高台の裾野に位置していて、敷地の裏には土砂崩れを防ぐための土留めが設置されていますが、能登半島地震によりこの土留めには、ヒビが入ったり傾いたりしました。

そこで新潟市では土砂災害の恐れがあるとして、1月3日に西区大野と寺尾の一部19軒に避難指示を出し、その避難指示は今も継続しているのです。避難指示の解除に向けて進みたいところですが、すぐには取り掛かれないある事情がありました。

【soleede 八幡雅史社長】
「今回、行政とかが介入して工事をする部分がある可能性があるので、そのあたりがやるやらないがはっきりしないと、こちらの作業が進められないという状況…」

土留めは私有地にあるため、本来は土地の所有者が工事を行うことになっており、新潟市ではそのための補助制度も設けています。
ただ今回は、土留めが崩れた場合には隣接する公道にも被害が及ぶ恐れがあることから、新潟市が一部の工事を行う可能性があるというのです。

【新潟市西区 水野利数区長】
「国と県のがけ崩れ対策事業があります。それを新潟市が申請して採択されれば、対策事業を使って工事ができる」

この土留めの工事が終わらない限りは避難指示が解除できないため新潟市では、この対策事業の活用について国や新潟県と検討を進めていますが、まだ結論が出ていません。

「工事着手は見通しがないです。避難指示解除の目途も、今のところはまだ分からないです。こちらとしては一刻も早く解除できればと思っています」

避難指示のエリアの住民は行政による工事を期待する一方で焦りも感じています。

【避難指示を受けた50代女性】
「半年経って進んでいるところはあるのでしょうけど、この辺一帯が地震の日から何も変わっていないので、それがもどかしいですね」

50代の女性が暮らすこちらの建物は「大規模半壊」の判定を受け、市営住宅での避難生活を余儀なくされています。

「土地と家は親が残してくれたので、ここに戻ってくるつもりでいますし、ここを離れるつもりはないんです」

住宅再建に向けて動き出したいと考えていますが、土留めの工事の方針が決まらないと住宅再建の方針も決めることができません。

気がかりなのが、年末に申請期限を迎える家屋の公費解体です。
土留めを工事する際に自宅を解体しなければならなくなる可能性がありますが、工事の具体的な方法が決まらないため、申請しようにもできないのです。

「住宅再建のお金の算段をしなくてはいけなかったんですけど、土留めの工事でどれくらいかかるのか分からないですし、こちら側は気が焦るんですけど、役場が決めないと決められないので、それがただひたすらもどかしいです」
「私のこの先の人生設計もあるので、早く決めてほしい」

避難指示エリアで自動車販売業を営む八幡雅史さんは、避難指示の解除を見据えて建築業者と店舗の再建についての計画や見積もりを2月に立てましたが、それも塩漬け状態となっています。

「できれば工事を一日でも早くして、なるべく事業再開を一日でも早くやりたいというのが本音ですけど…」
「行政の方々もいろいろなこと含めて一生懸命やってくれているのは分かっているので、そこはすごいもどかしい思いがあります」

新潟市西区大野に構える店舗は、八幡さんがカーディーラー勤務を経てから独立し、最初に建てた思い入れの強い店舗です。

「創業の地ということで、思い入れは特別にある場所なので、手放すことは今のところは考えていないです」
「なるべく早く結論が出てほしい、結論がいい悪いとか関係なく、早めにまず一旦結論が出てほしいな、ということが正直なところですね」

土留めの工事に関して新潟市では、年度内に県・国と調整して予算をつけることを目指しています。

避難指示解除の鍵となる土留め工事にはまだ時間がかかりそうで、再建を目指す人びとにとってはもどかしい日々が続いています。

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