南海トラフ地震臨時情報(巨大地震注意)を受け、海水浴場などを閉鎖して約5億円の損害が出たという和歌山県白浜町の大江康弘町長は21日、東京・霞が関の観光庁を訪れ、秡川(はらいかわ)直也長官に集客回復策の協力などを求める要望書を手渡した。大江町長は取材に「町独自で浜を閉める判断をしたので補償は求めない。そうせざるを得なかった実情を知り、今後に生かしてほしい」と語った。

秡川直也観光庁長官(右)に支援策などを求める大江康弘白浜町長(左)

◆海水浴場は閉鎖、相次ぐ宿泊キャンセル

 白浜町は8日の巨大地震注意を受け、9~14日に町内全ての海水浴場を閉鎖。花火大会も中止にした。ビーチリゾートを抱える町の例年8月の宿泊者数は延べ約20万人に上るが、宿泊キャンセルが相次ぎ、約5億円の損失が出たという。  政府は南海トラフ地震が起きた場合、白浜町の海水浴場には4分で高さ16メートルの津波が来ると想定。町は平時からライフガードによる呼びかけや看板で避難経路を周知しており、協定を結んだ近隣のホテルを津波避難場所としている。  今回の注意情報を受け、避難が間に合わない可能性があるとし、旅館業者からの反対もあったが閉鎖を決定。JR西日本が紀勢線の特急運転を一部区間で取りやめたことも影響した。  大江町長は提出後、「気象庁が情報を出す以上、人命最優先以外の選択肢はない。今後も臨時情報が出たらビーチは閉鎖する」と話し、「具体的な対策が全て自治体任せで、苦渋の決断を迫られた」と振り返った。「政府には情報発信のあり方を検証し、より具体的な対策を提示してほしい」と注文を付けた。(小沢慧一) 

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