『デトロイト・メタル・シティ』の作者として知られる漫画家・若杉公徳さん(49)が大分を舞台にした最新作『アキナちゃん神がかる』を手がけています。多彩な地元ネタと不穏な空気が入り混じる物語の裏側を若杉さんに独占取材しました。

「ヒーローものをやりたい」

大分県豊後大野市犬飼町出身の漫画家・若杉公徳さん。代表作はデスメタルがテーマのギャグ漫画『デトロイト・メタル・シティ』。発行部数が600万部を超える大ヒットとなり、松山ケンイチさん主演の映画で実写化されました。

若杉公徳さん

さらに、去年からゲッサン(月刊少年サンデー)で、『アキナちゃん神がかる』の新連載がスタート。主人公はプロの女性漫画家「アキナちゃん」で、久しぶりに故郷に帰省すると待っていたのは、謎の現象やバケモノたち。そして、こめかみに角が生える「アキナちゃん」。周囲の人たちを巻き込みながら主人公が奮闘する姿を描いています。

また、作品の随所で“田舎あるある”がコミカルに描かれていて、コテコテの大分弁でしゃべり倒すキャラクターも魅力的です。

若杉公徳さん:
「ヒーローものをやりたいと思い描くようになりました。前の作品も大分を舞台にしていたけど、ほかの場所ではリアルに描けないので、やはり自分が住んでいた場所を舞台として選びました」

リアルな描写を追求

作中には大分をモデルにした描写がふんだんに盛り込まれています。若杉さんは連載前から取材活動を積極的に行い、街並みや風景、日常の生活・会話、祭りなどを物語の中に落とし込んでいきました。

若杉公徳さん:
「取材で実際に出会って話をすると面白いことがたくさんある。女性を主人公にするのは初めてですが、1話目の最初にある主人公と編集担当者とのやり取りは、本当にあった出来事なんです」

「背景も忠実に再現しています。写真を撮っていて、道順も含め背景をあわせて描いているので、そういったところも見て楽しんでもらいたい」

作中に登場するスーパー「あじよし」は、若杉さんの地元に実在。この日、若杉さんは店を訪れ、店内の様子を撮影しました。

あべよしストア 安部恵一社長:
「実名でよかったんですけど、できればずっとコラボしてほしいですね」

若杉公徳さん:
「では遠慮なく(笑)。買い物に行くシーンとかも全部出させていただきます」

神楽をヒントに誕生

漫画に登場する吾子山市職員・河田さんのモデルは、豊後大野市役所に勤めている河野亮さんです。

若杉さんが取材する際、いつも現地を案内しているのが河野さんで、そうした縁から作品にも起用されました。

河野亮さん:
「若杉さんの漫画が好きでファンというところが一番先にあるので…。ファンからしたら自分だけ出るという得なことをしてもらえているので申し訳ないなと感じています」

そして今回の作品は、「神楽」が欠かせない重要な役割を担っています。主人公が子どものころから避けてきた神楽と向き合うことでストーリーは大きく動いていきます。

©若杉公徳/小学館・ゲッサン

若杉公徳さん:
「小さい頃から祭りや正月でいつも神楽を見ていたんです。それで取材の際に犬飼町にある黒松神楽の練習を見学させてもらいました。やっぱりおもしろいし、面をつけているのを見て変身ヒーローっぽいなと感じました。そこから神楽でいこうと決めました」

「もともとギャグ多めの漫画を描いていたので、笑えるところは笑いを入れて怖いところはパッと怖いシーンを入れてゾクッとさせられたらいいなと考えながら描いています」

「これまで出落ちの漫画ばかり描いていたが、今回は小出しに謎や正体がわかるような展開にしています。大分の人には大分弁が間違えていたら教えて下さい」

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