原発問題に取り組むジャーナリストや原子炉の元設計技術者などが、地震後の能登半島を視察。幻の「珠洲原発」の建設予定地は海底が隆起し、景色が一変していました。自然の脅威を目の当たりにして、参加者が感じたことは…。一方、北陸電力は…

6月、金平茂紀さんをはじめ、原発問題に取り組むジャーナリストや原発の元設計技術者など約20人が地震後の能登半島を視察に訪れました。

古代ギリシャの遺跡を思わせるようなこの場所は、石川県輪島市の黒島漁港です。 

地震前に撮影した映像と比べると、その違いは歴然としています。

地震前
地震後

参加者:「全部貝だ」
参加者:「海の中だったんですよね?」
参加者:「これ全部海の中」

輪島市の沿岸では、最大4メートルも地表が隆起。あちこちの漁港で海底が露出しています。

この能登半島地震の震源近くに、かつて“原発”の建設計画がありました。

能登半島先端でかつて浮上 “幻”の原発建設計画 

関西・中部・北陸の3つの電力会社による「珠洲原発」建設構想が明るみに出たのは1975年です。

珠洲市は住民の反対運動が起こり、推進派と反対派が対立を深めていきました。しかし、2003年、電力3社は計画を凍結することを決定。市を二分した28年間の争いは幕を閉じました。

「珠洲原発」の反対運動に奔走した元石川県議会議員の北野進さんが当時の状況を話してくれました。

北野進さん:「ボーリングなどの調査を中止させなければいけないと、調査を容認している市長のところに行きました。市長が『もう一度関電と話してみる』と姿をくらましてしまいましたが、結論を待たなきゃいけないだろうとそのまま市役所の会議室で市長の帰りを待ち続けて40日と。高屋地区の調査の阻止行動と市役所の座り込みを並行してやっている間に、関電は調査を中止するということになりました」

海が岩場に…びっくり 関西電力計画予定地は2mの隆起

一行が向かったのは石川県珠洲市の高屋地区。ここは関西電力が原発の建設を予定していた場所です。約2メートル隆起し、一面ごつごつとした岩場が露出。いたるところに、地震の爪痕が今も生々しく残されています。

珠洲市高屋地区
関西電力の原発建設予定地

北野進さん:「この辺りから下の所で阻止行動をやっていたんですが、当時はこの前のところは本当に海。1月末に来たら、これだけ岩場が広がっているということで、びっくりです」

関西電力の原発建設予定地

近くの高屋漁港では、はしごをかけないと船に乗ることもできない程地面が隆起しました。

東芝で原子炉格納容器の設計に携わっていた元設計技術者の後藤政志さんは。

後藤政志さん:「大量の配管とダクト、いろんなものが通っていますから、それがズタズタになっちゃう、1本どこかがいくんじゃなくて、全部。とんでもないことが起こるんです」
記者:「もし仮にここに原発があったらどうなっていたと思いますか」
後藤政志さん:「想像を絶しますね、とんでもないことになったと思いますよ」

「こんな地形が変わるような所に…」中部電力予定地も景色は一変

続いて向かったのが珠洲市の寺家地区。ここは中部電力が大型原発2基の建設を予定していました。

中部電力の原発建設予定地(寺家地区)

北野進さん:「この辺りも結構隆起が大きくて、大体この辺りまで海でした。この辺りも今まで海でした」

中部電力の計画では、原子炉の炉心がここに建設される予定だったということです。地震後、景色は一変し、今はごつごつとした岩場が広がっています。

ジャーナリスト・金平茂紀さん:「こんな地形が変わるような所に原発つくろうとしてたっていうこと自体が恐ろしいけどね」

北野進さん:「原発の予定地に直接来てもらって、ここで原発を建てる予定だった、その地形がこんな風に変わってしまっているっていう現実、現状をまず見てほしいなというのが一番大きくあります」

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