夏の甲子園でベスト8に駒を進めた青森山田。19日に初のベスト4進出をかけて滋賀学園(滋賀)と対戦する。25年ぶりのベスト8進出を決めた3回戦で先発して6回無失点で甲子園デビューを果たした下山大昂投手。放送では紹介しきれなかった下山投手と父親の物語とは。

“関と櫻田のチーム”。青森山田が今春センバツでベスト8に入った際、マウンドに立ったのはダブルエースの関浩一郎投手と、櫻田朔投手の2人だけだった。

下山大昂投手は青森県大会では2試合で先発。7年ぶりの甲子園切符獲得に貢献したものの、センバツではメンバー外だったこともあり、夏の大会を迎えるまでは不安な気持ちがあった。

それは下山投手の父・和也さん(50)も同じだった。
下山大昂投手の父・和也さん
「本人も私も背番号がまだもらえてなかったので、確実にもらえるまでは心配してた」
メンバー入りが決まってから、和也さんはこう声を掛けた。
※下山大昂投手の父・和也さん
「誰もが経験できる場所ではないし、『とにかくけがしないように楽しんで』と話しましたね」

夏の甲子園でベスト8をかけた16日の県立石橋高校(栃木)との3回戦。先発マウンドに立ったのは、関投手でも櫻田投手でもなく、2年生の下山投手だった。

この大一番の試合、強い日差しが照り付ける一塁側のスタンドで見守った和也さんは、もしかしたら下山投手以上に緊張していたのかもしれない。1アウトをとるたびに拍手を送った。

和也さんは地元の五所川原市から車で約15時間かけて今月12日に現地入りした。短期賃貸型のマンションを借りて、青森山田の試合を待つ日々。試合では緊張が続くため、試合がない日は息抜きで関西を満喫していた。
下山大昂投手の父・和也さん
「観光で淡路島と徳島県に行ったんです。きょう(3回戦で)勝てば、さらに会社の休みもらえるのでがんばってほしいですね」。

冗談めかしたが、内心はドキドキ。下山投手の先発登板をしったのは実は試合直前だった。
※下山大昂投手の父・和也さん
「普段から連絡はとっているけれど、今日の試合で先発する連絡はこなかった。携帯電話でスタメンを調べた時に初めて知ったんです。だから、先発すると知ってびっくりした。うれしいし、使ってもらえてありがたい」

下山投手は6回無失点で甲子園デビューを白星で飾った。

※下山大昂投手の父・和也さん
「よく投げてくれた。キャッチャーの橋場(公祐)くんをはじめ先輩方を信用して投げていたから心配はしていなかった」
それでも初めて甲子園のマウンド。和也さんは下山投手の変化を感じていた。

※下山大昂投手の父・和也さん
「もっと楽しんでやってほしいな。普段はもっとワイワイやってるから。まあ、緊張してるだろうな。それでも中学は軟式野球をしていて、硬式野球は高校から。始めて2年で甲子園ですから、もうお腹いっぱいですよ」

青森山田高校入寮前の3月、下山投手(中央)。左は次男大侑さん、右は長男太鳳さん(父和也さん提供)

この試合、下山投手が浴びた安打は7。2回、3回、4回、6回には三塁に走者を背負いながらも要所をしめる投球で無失点に切り抜けた。その要因の1つとして和也さんは3人兄弟の末っ子として育った“ずる賢い性格”を挙げた。

小学生時代の下山選手(父和也さん提供)

※下山大昂投手の父・和也さん
「昔からずる賢い性格で目立たない三男だったので、お兄ちゃんが怒られてたりなど、『やばいな』という雰囲気を感じたらスッといなくなるんです。(この試合も)球種もそんなにないのに、首を何回も振ったりして、間の取り方とか、打たれたくないから」

青森山田はこの試合に勝ち、夏は25年ぶりにベスト8に進出。和也さんは日本一を目指して戦う下山投手を誇らしげに思うとともに、胸には別の感情もわいている。※下山大昂投手の父・和也さん
「がんばってほしいけれど、とにかくけがせずに、この試合だけでなく、高校野球3年間を全うしてほしい。元気に野球をしてほしい」。

青森山田が勝ち続ければ、和也さんの休みは“延長”。下山親子の長い夏休みはまだ終わらない。

下山投手はなぜ先発を告げなかった?

試合翌日の取材に下山投手は
「サプライズというか、ドッキリというか…驚かしたかったです。次の試合もチャンスがあれば頑張ります」

鄭重声明:本文の著作権は原作者に帰属します。記事の転載は情報の伝達のみを目的としており、投資の助言を構成するものではありません。もし侵害行為があれば、すぐにご連絡ください。修正または削除いたします。ありがとうございます。