異例の”派閥なき”総裁選…自由度高い議員票に難しい「票読み」。候補者乱立まで?そもそも派閥と総裁選の関係とは?逆風の度に「選挙の顔」"擬似的政権交代"とは?気になる見どころを手作り解説でお伝えします。

■“派閥なき”総裁選

派閥なき総裁選といわれますが、裏金事件の発覚まで自民党には、安倍派や麻生派、茂木派や岸田派など6つの派閥がありました。しかし今回は、麻生派を除く5つの派閥が解散を表明した中で行われる異例の総裁選。派閥単位での「票読み」が難しくなっているのです。

■“女王バチと働きバチ”象徴的な「三角大福中」

従来の総裁選で自民党議員は、基本的にそれぞれが所属する派閥の方針に従って投票していました。自民党政治に詳しい後藤さんは、派閥のトップ「領袖」と所属議員の関係について、一匹の女王バチのために巣を作る大勢の働きバチのような関係だといいます。「派閥の領袖」を所属議員が一致団結して担ぎ、他の派閥と争って総裁ポストを取りに行くわけです。
象徴的だったのが、1970年代から80年代にかけて派閥を率いた、三木武夫・田中角栄・大平正芳・福田赳夫・中曽根康弘の“三角大福中”の時代です。各派閥が総裁を輩出するためしのぎを削り、自民党内での“疑似的な政権交代”にも例えられてきました。実際、この5人は全員、総裁選に勝利し、それぞれが総理大臣になっています。

■”ポスト岸田”の10人

さて、今回は裏金事件で派閥の解散表明が相次ぐ中での総裁選ですが、名前が挙がっている候補を見ますと、派閥領袖の経験者は石破元幹事長と茂木幹事長だけ。小泉進次郎氏は、派閥に所属したことがありません。派閥単位での締め付けや候補者を調整する力が弱まるなか、この10人全員が「推薦人20人」を確保できるかも見通せない状況です。
裏金事件でかつてない逆風の中にある自民党内で待望されるのは「選挙の顔」。新しい総裁誕生で世論の風向きが一気に変わることもあるからです。例えば、2001年当時の森内閣は、相次ぐ失言などで支持率が10%前後まで落ち込むなど、極めて厳しい逆風の中で総裁選が行われました。当初は、派閥領袖の橋本龍太郎氏が有利とみられていましたが、勝ったのは、「自民党をぶっ壊す」と叫んだ小泉純一郎氏。これで一気に、自民党の支持率も回復したのです。

■“表紙(顔)”を変えて自民党は変われる?

今回も、新たな「選挙の顔」を選んで逆風を跳ね返したい自民党ですが、野党側は「表紙を変えただけでは自民党は変わらない」と批判。総裁選と同じ9月下旬には、政権交代を目指す立憲民主党も代表選を構えていて、枝野元官房長官が立候補を表明。野田元総理が出馬する可能性も取りざたされています。
秋には解散総選挙も想定される中、岸田総理の撤退表明によって一気に候補乱立の気配が漂う自民党総裁選。「表紙」を変えることで有権者の支持を取り戻すことはできるのでしょうか。

(「サンデーモーニング」2024年8月18日放送より)

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