家にも学校にも居場所がない。ホストクラブの高額料金を払うために体を売るしか…。夏休み真っただ中の東京・新宿歌舞伎町に、そんな思いを抱える若者たちが集まる。公益社団法人「日本駆け込み寺」(新宿区)のメンバーは8月、夜通しかけて悩みを聴こうと街に出ている。一緒に歩いた。(中村真暁、写真も)

新宿東宝ビル周辺でゴミを拾う清水葵さん(左)ら

◆夜の街に立つ女性に声を掛けると…

 8日午後10時、肌にまとわりつくように蒸し暑い。大久保公園周辺に何十人もの女性が立つ。そばで男性たちが彼女たちを見定めるようにたむろしていた。辺りでは売春行為が頻発している。長く学校が休みのこの時期、若者が犯罪に巻き込まれる恐れも高まる。  「お水いかがですか」「スマホの充電に来てください」。女性たちに声をかけた。何幾人かには駆け込み寺を紹介しできたが、目をそらされることも。相談員の清水葵さん(25)は「家出した人がいることもある。支援につなげサポートするためにも、私たちをまず知ってもらうことが大切」と話す。  事務所に戻ると、声をかけたばかりの20代前半の女性が「充電できますか」とドアを開けた。ひとり親家庭で育ち、母親から虐待を受け、5歳ごろから祖母や伯母などに預けられたという。転校が多く、友達もあまりできなかった。中学にはほとんど行っていない。

◆ホストクラブにはまり、「パパ活」を始め…

大久保公園近くで立っていた女性。腕にはリストカットの傷が残る

 歌舞伎町に初めて来たのは15歳のころ。ホストクラブにはまった。17歳から大人の男性とデートをして金をもらう「パパ活」を始めた。夢だったヘアメークの仕事をしているが、月給は15万円ほど。店を持ちたいが生活費すら足りず、公園近くに立ち続けている。  腕には、中学時代に始めたリストカットの傷痕が多く残る。「死にたい気持ちがあるけど、ビルから飛び降りてママに泣かれてからは抑えてる。許せないのに、好きなんですよね」  午前3時、新宿東宝ビル周辺の「トー横」で見回りを兼ねたごみ拾いをした。酔った中年男性や外国人観光客に交じり、若者たちがいた。地べたに寝転び、スマホを眺めたり、飲み食いしたり。都内外から集まる通称「トー横キッズ」。安心できる居場所がない、と打ち明ける若者は少なくない。

◆相談時間は木~土曜の午前10~翌午前6時、月~水曜の午前10~午後8時

薬物の包装シートなどが散乱する歌舞伎町

 空き缶やたばこの吸い殻、市販薬の空き箱が散らばる。ごみ拾い中、薬物を過剰摂取した子を介抱し、リストカットの傷を手当てすることもあるという。  田中芳秀事務局長(43)は「夏休み中は虐待や家族間の不和で自宅にいられない若者や、彼らを犯罪や非行に巻き込む大人が増える。トラブルに遭ったとき、夜間でも逃げ込める場が必要」と強調した。  相談の対応は木—土曜は午前10時〜翌午前6時、月—水曜は午前10時〜午後8時。電話=03(5291)5720=でも応じる 

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