大手ゼネコンが、仙台市内に建設したマンションで耐震施工不良が相次いで見つかっています。「構造スリット」と呼ばれるものが、計画通り施工されていなかったことが問題視されていますが、このスリットとはいったい何なのか、そしてどんな働きをするものなのでしょうか。

施工計画の約1割しか入っていなかった

問題が見つかったのは、清水建設が造った仙台市内のマンション1棟です。
マンションには通常地震の揺れから柱などを守るための「構造スリット」が設置されます。しかし、清水建設などが6月にこのマンションで行った調査では、抽出した85か所のうち74か所でスリットが設置されず施工計画の1割程度しか入っていなかったことがわかったということです。

マンションは20年以上前に建設されたもので、清水建設東北支店は「原因については分からない」としつつ、建物全体の調査や修繕工事の準備を進めているということです。

構造スリットの施工を巡っては、前田建設工業が手がけたマンションでも「図面と合っていない」との指摘が住民側からあり、市が前田建設工業に報告を求めています。

では、今回、問題となった「構造スリット」とはどのようなものなのか。

スリットとは「隙間」だった

都市建築学の専門家、東北大学の前田匡樹教授に聞きました。

東北大学 前田匡樹教授:
「一般的に建物には柱があって壁があります。壁と切り離すために入れるものをスリットと言っています。完全に空洞でもいいんですけど、スポンジのような柔らかいものを入れておいて柱が動けるようにする。そういう風に作ることが多い」

スリットは「隙間」という意味で、「構造スリット」とは地震の揺れから建物を守るために柱と壁の間にある構造的な隙間のことです。一般的にはビルやマンションなどの鉄筋コンクリート造りの建物に多く取り入れられています。

スリットの役割とは?

東北大学 前田匡樹教授:
「このスリットという役割は柱が地震の力を受けて変形する時に壁とぶつかり、柱が壊れたりする場合があるので、ぶつからないように隙間を空けておいて柱が動けるような役割がある」

柱と壁の間に隙間=スリットがあることで地震が起きた時、柱にかかる負担が少なくなると言います。

東北大学 前田匡樹教授:
「1995年の阪神淡路大震災で、柱が先に壊れるという被害が多くあったので、スリットを入れるというのが広がってきて、今は多くの鉄筋コンクリートで使われている」

大きな揺れから建物を守るためにある「構造スリット」ですが、前田教授によると、設計上で壁と柱を繋いだ方が、より建物の性能が良くなる場合もあり、その場合「スリット」を入れないといいます。つまり、スリットがないからダメだというわけではなくて、設計でスリットがあるべきなのにない、それによって想定外の壊れ方が起きることがいけないということでした。

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