東日本大震災の発生から11日で13年5か月です。13年前の震災を機に仙台でアウトドアショップを開いた男性がいます。男性がアウトドアに熱意を注ぐ理由とは。

店のコンセプトは…

商品の魅力を気さくに紹介する川村峻介さん40歳。仙台市中心部でアウトドアショップ「ENstyle(エンスタイル)」を経営しています。店内に並ぶのは調理器具や食料品、書籍など様々。この日は、登山愛好家の夫婦に山の地図を紹介していました。

ENstyle 川村峻介さん:
「これは磐梯、吾妻、安達太良3つの百名山が載っていますから、これは激押しですよ」

熱心に接客する川村さんですが、アウトドアの魅力を伝えるのには理由があります。

ENstyle 川村峻介さん:
「お店のコンセプトはアウトドアに強い人が増えれば災害に強い人が増える」

開店のきっかけは13年前の東日本大震災でした。

河村さんが体験した「非日常」

ENstyle 川村峻介さん:
「この町がすごい好きで自分でも住みたくて引っ越してきて、被災した時にもここに住んでたんですけれども」

2011年3月、川村さんは、当時住んでいた青葉区本町で被災しました。震災直後は流通がストップし仙台市中心部でもスーパーに長い列ができました。ライフラインも停止し電気も水もない生活を余儀なくされました。

ENstyle 川村峻介さん:
「寒かったので、灯油とか毛布とか食材とかも持ち寄って、その方が効率いいかなっていうのでみんなで集まって共同生活を始めました」

顔見知りの住民と共同生活をしたという川村さん。停電が続くなか役立った一つが震災2日前の地震をきっかけに購入していたヘッドランプです。
さらにガスバーナーは、お湯を沸かすのに役立ちました。共同生活を通して自然とこんな考えが浮かびました。

ENstyle 川村峻介さん:
「アウトドア用品すごい便利だなと。災害時にすごく役に立つなというのを痛感しましたし、ああいうのがあればよかったこういうのがあればよかったっていうのもすごく思いました」

日常の先にある災害

もともと雑貨店を開く夢を持っていましたが、震災をきっかけにアウトドア用品の店を構えたいと考え、登山やキャンプを本格的に始めて知識を深めました。

そして、2015年9月に現在の店をオープンさせました。太陽光で充電できる折り畳み式のLEDランプ。気温が低くても火力が安定しやすいコンパクトなガスバーナーセット。小銭を貯めているのも13年前の経験からです。

ENstyle 川村峻介さん:
「長期的な停電が続くと銀行がストップして、お釣りを用意できなくなる。お釣りが用意できないとお札で買い物できなくなる。自販機もそうです。飲み物があるのにお札は使えないということもあった。
日常と災害を区切らないっていうのがすごく重要だと思います。日常の延長に災害があるっていう考えをもって備えていく」

さらに川村さんは去年から新しい取り組みを始めました。

日常とアウトドアの垣根を無くす

アウトドアとインドアの「ドア」をなくすという意味の「NO DOORS(ノー・ドアーズ)」というイベントです。

7月下旬、仙台市内のイベント会場には、全国のアウトドア店や雑貨店など24店舗がブースを出し、訪れた人が店員との会話を楽しみながら目当ての商品を買い求めていました。

買い物客:
「普段見れないものがたくさん見れるので楽しいです」
東京からの出店者:
「長いお付き合いなんで。その川村さんがこういうアウトドアのイベントをされるっていうことでぜひ出店させてくださいと」

会場では、空き缶を使ってアルコールストーブをつくるワークショップも企画されました。日常とアウトドアの垣根を無くすそんな思いを込め「NO DOORS」と名付けました。

ワークショップ参加者:
「簡単でした、はい、意外と。身近なもので作れるのはすごくいいことだなと思いました」

アウトドアの知識を災害時に役立てたい。開業当初からのぶれない信念で川村さんはこれからも活動を続けます。

ENstyle 川村峻介さん:
「まずはアウトドアに興味を持っていただきたい。
一人でも多くアウトドア人口が増えれば、それが結果的に災害に強い人が増えるという考えを持って、災害に強い人を増やしたい」

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