◆助かった夫と長男は、仮設住宅で暮らす
元日の午後4時過ぎ、突然大きな揺れが襲い、木造2階建ての自宅は一瞬にして崩れた。長男の勉さん(71)と夫の清吉さん(96)は窓の近くにいたため逃げ出すことができた。しかし、持病でベッドに寝ていたさだ子さんは、崩れた天井に閉じ込められた。地震で亡くなった前野さだ子さんを悼み、手を合わせる長男の勉さん(右)と夫の清吉さん=石川県輪島市で
レスキュー隊がさだ子さんを救出したのは、震災から数日後。既に亡くなっていた。小学校の用務員として働き、子どもたちに好かれたというさだ子さん。亡くなってから1カ月ほど、勉さんは「頭が真っ白だった」と振り返る。遺骨を前に「僕にとっては日本一のかけがえのないお母さん。助け出したかった」と悔しさをにじませる。 勉さんと清吉さんは現在、町内の仮設住宅に暮らしている。今の住まいは手狭で遺骨を置くことができず、壊れた墓の再建がいつになるかは分からない。いずれは、小さくてもいいから元の場所に家を建て、父と暮らすことを望んでいる。 「命ある限りは頑張りたい。お母さん、長生きしてくれてありがとう」。そう静かにつぶやいた。(猿渡健留) 鄭重声明:本文の著作権は原作者に帰属します。記事の転載は情報の伝達のみを目的としており、投資の助言を構成するものではありません。もし侵害行為があれば、すぐにご連絡ください。修正または削除いたします。ありがとうございます。