能登半島地震前の石川県珠洲市内を記録した写真展「能登半島 記憶の復元」が21~23日、東京都港区六本木の六本木ヒルズ森タワーで開かれる。地震で全壊した自宅に津波が押し寄せた同市の写真家、松田咲香さん(38)が撮影した伝統的な祭りや豊かな里山里海を写した50点。データ復旧企業が松田さんの水没したハードディスク(HDD)を無償で復旧してよみがえらせた。(岩本雅子)

宝立七夕キリコ海中乱舞=いずれも石川県珠洲市で(松田咲香さん提供)

◆見附島やキリコ、被災後の写真も

 朝日と共演する能登のシンボル「見附島」や、各地域の祭りで住民に担がれる大きな灯籠「キリコ」、冬の立山連邦を背景に海に浮かぶタラ漁の船―。松田さんが珠洲市内で撮影してきた祭りやなりわい、風景の写真が並び、一部被災後の様子も展示する。  松田さんは同市出身。大学卒業後は東京都内でカメラマンのアシスタントを経験し、2013年にUターンした。翌14年から市内各地の祭りを撮影しているうちに、地元の魅力に気づいたという。

「冬の風物詩」(松田咲香さん提供)

◆風化を懸念「自分の役割は昔の能登の姿を伝えること」

松田咲香さん

 地震発生時は実家にいて無事だったが、同市内の自宅は全壊し、カメラやHDDは津波にのまれた。2月に泥だらけのHDD5台を見つけ、データ復旧大手「デジタルデータソリューション」(東京)に復元を依頼、保存された10万枚のうち約6割の復元に成功した。  4月にデータが移された別のHDDを受け取った松田さんは「不思議な気持ちだった。もう撮れない写真もたくさんある。データ復旧の重要性を感じた」と振り返る。地震に大切な隣人や友人を奪われ、カメラや照明など写真家としての道具も全て失ったが、写真の一部が復元されて「自分の役割は昔の能登の姿を伝えることだ」と少し前を向けるようになったという。

「鵜島のきゃあらげ」(松田咲香さん提供)

 会場は森タワー15階のデジタルデータソリューションで午前10時~午後4時。松田さんは会期中ずっと在廊する予定で、「地震から半年が過ぎ、能登が忘れられている。能登は変わらず美しい。現地に足を運ぶきっかけになれば」と来場を呼びかけている。入場無料だが19日までに事前予約が必要で、専用ページから申し込める。 

鄭重声明:本文の著作権は原作者に帰属します。記事の転載は情報の伝達のみを目的としており、投資の助言を構成するものではありません。もし侵害行為があれば、すぐにご連絡ください。修正または削除いたします。ありがとうございます。