南海トラフ地震臨時情報「巨大地震注意」が発表される中、安全対策を講じ開催された高知の真夏の祭典、「よさこい祭り」。開幕直前の8日に"臨時情報”が発表され、出場を見合わせたチームもあった中、踊り子の数が半分になりながらも、東京から参加した大学生チームがありました。

チームメンバーが半分になっても懸命にアピールした「中央大学 一期一笑」チーム(12日・高知市)

そのチームとは、「中央大学 一期一笑(いちごいちえ)」。中央大学に通う学生が踊る、若い力溢れる元気なチームです。今回が15回目の出場で、チーム全員が東京で練習してきた成果をよさこいの本場・高知で披露するはずでした。

しかし、8月8日午後4時43分ごろ、日向灘を震源とするM7.1の地震が発生、高知県内には一時、津波注意報が発表される事態に。気象庁は「南海トラフ地震臨時情報」を発表。約2時間半後の午後7時15分には南海トラフ地震が発生する可能性が相対的に高まったとして、「巨大地震注意」を発表しました。

「一期一笑」のメンバーがこのニュースを知ったのは、高知への"出発直前”。チーム内は「出場すべきか、否か」話し合いを行うとともに、自分たちで宿泊場所と海までの距離を確認するなどしたほか、卒業生にも相談したといいます。その結果、出場に際し「保護者から了承を得られた学生だけ」が参加する形となりました。

今年は、去年より40人多い115人が出場を予定していましたが、実際によさこい祭りで踊ることができたのは「66人」。半数近いメンバーが、遠く離れた東京から見守ることになりました。

一夜明け、先に高知入りしたメンバーと避難訓練を行い、避難経路、所要時間、ハザードマップなどを確認した「一期一笑」。それでも、メンバーの心の中には"一抹の不安”があったといいます。

■「中央大学 一期一笑」 小田彩亜矢さん
「もちろん怖いですし、避難所とかもしっかり調べて、それでもやっぱり不十分だと思うんですけど『行くしかない』というか、親にすごく心配されたり止められたりして来られない子も、もちろんいたんですけど、それでも高知県が開催を決めてくれたので『行こう』と」

■「中央大学 一期一笑」宇田川勇哉さん
「やっぱり『行くのは怖いな』というのが第一印象で…。でも、今まで2か月、必死に練習してきたのもあって、『どっちを取るか』っていうことだった」

不安を抱えながらも、よさこいを全力で楽しもうと本番に臨んだ「一期一笑」。全員が揃い、踊りを披露することはできなかったもの、東京に残されたメンバーの“思い”は、しっかりと受け継がれていました。

「鳴子」には高知で踊れなかったメンバーの名前が

こちらは、踊り子たちが使用する「鳴子」。上側の部分に持ち主の名前が書かれているのがわかります。今回、出場できなかったメンバーの名前です。

東京に残ったメンバーもメッセージでエールを送った

東京に残った学生たちも、"メッセージ動画”で、高知で踊りを披露するメンバーにエールを送りました。

■「中央大学 一期一笑」 小田彩亜矢さん
「毎日やり取りしながら、応援ムービーとかも撮ってくれて、毎日連絡をとって…。悲しいですけど、そうしてやっています」

チームの中核を担う3年生は、新型コロナで青春の貴重な時間を奪われた世代。チーム代表の山下葵さんは、"どうすることもできない状況"を目の当たりにし、「葛藤を感じることもあった」といいます。

「中央大学 一期一笑」代表 山下葵さん

■「中央大学 一期一笑」代表 山下葵さん
「毎年、1年生の時は『コロナで行けるかどうかわからない』、2年生の時は『台風がちょうど重なって中止になるかもしれない』、3年生の時は『地震』ということで…。現実を受け止めることが難しかったり、『なんで今なの…』という、悔しい思いでいっぱいでした」

高知で踊りを披露する「中央大学 一期一笑」のメンバー(12日・高知市)

チームを不安の渦に巻き込んだ、南海トラフ地震臨時情報「巨大地震注意」の発表。それでも、「一期一笑」は、高知に来ることができたメンバー全員が前を向き、東京にいるメンバーの分まで、全力で踊りを楽しんでいました。

高知で元気いっぱい躍動した「中央大学 一期一笑」(12日・高知市)

■「中央大学 一期一笑」宇田川勇哉さん
「いつ来ても、いつ踊っても本当に楽しいですし、来年も来たいと思っています。絶対、来年も、『何があっても開催してほしいな』という思いがあります」

■「中央大学 一期一笑」小田彩亜矢さん
「3年目なんですけど、何回来ても楽しくて…。本当に、『今日が最後』というのが、2日間しか踊れなくて悲しいぐらい、"超、楽しい"です」

■「中央大学 一期一笑」代表 山下葵さん
「よさこい、3年間やってきたんですけども、この時が『人生で一番輝いているときかな』と自分自身も思いますし、一人一人が主役の『一期一笑』なので、踊っていなかった人も、『この鳴子を通じて来ている気持ちは一緒』というところを、踊りを通じて、皆さんに伝えられたらいいなと思っています」

東京にいるメンバーの思いを胸に懸命に踊りきった「中央大学 一期一笑」

地震への「備え」「注意」が呼びかけられる中での"異例の開催"となった、本場・高知の「よさこい祭り」。高知県内外から出場した、1万7000人の踊り子たちの様々な“思い”が交錯した4日間が、幕を閉じました。

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