◆コンクリ充塡不足で隙間や鉄筋の変形
周辺自治体首長の視察で公開された東海第2原発の防潮堤の施工不備現場。コンクリート壁に鉄筋の露出などが確認できる=5月
補強工事や地盤改良で対応する案は7日、規制委に伝えた。 防潮堤は安藤ハザマなどの共同企業体が建設。原発で使う取水口が設置されている鋼製防護壁を支える鉄筋コンクリート製の2本の基礎で問題が見つかった。南側(高さ約50メートル、縦横15.5メートル)と北側(高さ約60メートル、縦横15.5メートル)で、コンクリの充塡(じゅうてん)不足による隙間や鉄筋の変形があり、昨年10月に原電が公表した。 規制委によると、原電は今年6月18日に開かれた規制委の審査会合で、調査結果を説明。規制委事務局の原子力規制庁の担当者は「防潮堤の構造体としては期待できない」「地震と津波に耐えられるのかは分からない」と指摘し、「抜本的に設計を見直し、造り直しを含め検討していただきたい」と求めた。 規制委によると、8月7日に開かれた原電との面談で、原電側は「基礎部分を残したまま、補強や地盤改良などによって鋼製防護壁を支える仕組みに変更する」と説明した。東海第2原発の防潮堤の基礎で、コンクリート充塡(じゅうてん)不足でできた隙間=日本原子力発電提供
◆日本原電は「9月完成」にこだわる
原電の広報担当者は取材に対して「(問題があった)基礎を、防護壁を支える構造としては使用しない。工程の社内決定はないが、9月の工事完成は大変厳しい状況だ」としており、「9月完成」にこだわる姿勢を崩していない。規制委に求められた抜本的な設計見直しに沿った対策案か、との問いかけには「(規制委に)説明したとおり」と答えるにとどめた。 規制庁の審査担当者は東京新聞の取材に「(原電側が提示した案は)造り直しとは言いにくいのではないか。補強で十分なのか今後の審査会合で議論していきたい」と述べた。 原電の対応には、地元自治体から批判の声が出ている。茨城県の大井川和彦知事は「この状況でいまだに(工期を)変えないのは、地元に対して不誠実じゃないかと思う」と問題視。東海村の山田修村長や30キロ圏の自治体の首長からも同様の声が相次いでいた。日本原子力発電東海第2原発 1978年11月に運転開始。出力は110万キロワット。2011年の東日本大震災当時は稼働中で、高さ5.4メートルの津波に襲われた。冷温停止に必要な外部電源と非常用電源の一部を失ったが、かろうじて深刻な事故は免れた。18年に原子力規制委員会から新規制基準に適合すると判断された。水戸地裁は21年、避難計画の不備などを理由に運転の差し止めを命じた。東京高裁で裁判が続く。
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