高校球児の夢舞台「甲子園」。
それは選手だけではなく、選手を後押しする「応援団」も同じだ―。
8月13日、兵庫県の阪神甲子園球場で行われた青森山田対長野日大の試合。
「1回表。青森山田高校の攻撃は1番センター佐藤くん」
―場内アナウンスとともに怒涛の演奏が始まった三塁アルプススタンド。
朝8時からの試合。気温はすでに30度を超えている。この熱気のなか、精一杯楽器に息を吹き込む青森山田高校吹奏楽部の髙村彩名さん(2年生・16歳)がいた。
「ここに来れることも当たり前ではないので、一つ一つの演奏を大事にしたいです」
暑さにも負けず、選手にエールを届ける吹奏楽部。
髙村さんは“憧れの舞台”と話す甲子園での演奏を楽しんでいた―。
地元・十和田市の中学校で吹奏楽を始めたという髙村さん。中学3年生の時には吹奏楽部の一員として、県のコンクールで金賞、東北地方のコンクールでは銅賞を受賞するなど、メキメキとその腕前を上げていった。
髙村さんが野球の応援を初めて経験したのは、この中学校時代。高校生に進学すると選手の背中を後押しする演奏がしたいという気持ちが芽生えたという。
「青森山田に来た理由が県内でも吹奏楽が随一の実力を持っているので、高校でも極めたと思ってきたし、スポーツでも強いので、もし行けるなら“夢の舞台”で演奏したいという気持ちがありました」
青森山田高校に進学後、2024年の春のセンバツに続き、2大会連続で「甲子園」へ―。
「いつもテレビでみていた側だったので、まさか自分がここに来れたのが、春の時も初めて球場に入った時も、ここがテレビで見ていた場所かと感動した。夏も野球部のおかげで来れてうれしい。県内のあの吹奏楽の強豪校も、この甲子園で演奏したんだと思うと、ここ(アルプススタンド)は私たちにとっても憧れの場所なんです」
―しかし、夢舞台とはいえ慣れない環境での演奏。戸惑いも感じたというが、選手のための応援を第一にこの夏も精一杯の演奏でエールを届けている。
「青森と比べたら甲子園はだいぶ暑いですね。あと、広さも甲子園の方が大きいです。だからこそ、届けようという気持ちが強くなるんです。青森でも甲子園でも選手との距離を考えて演奏したいです。手元やスタンドだけで完結させるのではなく、選手に届ける気持ちで演奏したいです」
吹奏楽部の部員たちは、試合前日の12日の朝11時に青森からバスに乗って、ほぼ1日かけて甲子園球場へ入った。球場についたのは試合開始1時間半前の朝6時半。車内では2時間毎に休憩し、夜は車中泊をした。車内での過ごし方は人それぞれ。体力のある高校生とはいえ、1日かけたバス移動は大変だったと語る。
「みんなでDVDを見たりしていました。でも、甲子園が終わった後も演奏会が入ってくるので、楽譜を読んだり…。バスでの移動は本当に大変でした…」
それでも、アルプスに陣取った応援団に疲れの色は見えなかった。
夏の陽射しを受けながら、選手たちにめいっぱいのエールを送り、青森山田高校野球部は見事、初戦を突破した。
髙村さんは選手たちへの感謝の気持ちを言葉にした。
「この甲子園に連れてきてもらって本当にうれしい。県大会が終わった後に、選手たちから『応援が力になった』と言われて嬉しかった。私たちもそれを励みに応援を頑張りたいし、選手たちにも自分たちの応援で少しでも良いプレーをしてほしいです」
チーム最高成績のベスト8まであと1勝の“青森山田ナイン”。
次の試合は8月16日の3回戦で、栃木県代表の県立石橋高校と対戦する。
甲子園へ送り出してもらった選手たちと、選手に連れてきてもらった「応援団」。
チーム一丸となって、夏の甲子園を駆け抜ける―。
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