パリオリンピック™、レスリング女子57キロ級で、櫻井つぐみ選手(高知・香南市出身)が、初出場ながら金メダルに輝きました。櫻井選手の父であり、3歳の時から高校時代まで指導してきた、櫻井優史さんが、決勝を終えた直後、インタビューに応じてくれました。

オリンピック初出場で初の金メダルを獲得した櫻井つぐみ選手。

―Q.決勝を終えて率直な思いは
本当に「よかったな」っていうところが、正直な気持ちです。

―Q.金メダルを獲得したことについて
なかなか「獲りたくても獲れるものじゃない」ので…。オリンピックを目指してみて「オリンピックを目指すことの大変さ」もわかりましたし、この現場に来て「オリンピックで金メダルを取ることの大変さ」というか「難しさ」もすごく実感したところでしたので、その中で、本当に、つぐみ自身がいつも通りの力を発揮して優勝してくれたことは、本当にうれしく思っています。

娘・つぐみ選手の金メダル獲得を現地で見届けた櫻井優史さん。試合後、現地時間は午前1時30分を回っていたが、丁寧に取材に応じてくれた。

―Q.つぐみさんが試合に臨む前に伝えたことは
「まずは対戦相手のチェックをしっかりする」こと。もちろん本人はやっていたんですけど、そのあたりを「妥協なくやる」っていうことと、あとはもう「普段通りに、しっかり自分の力を出せるように」と。

直前、1週間前、私も群馬(つぐみ選手の拠点)の方に行って本人の様子を見ながら、クラブの高校生の練習をさせていたんですけど、その時にも、「普段通りやること・生活すること」を本人にも伝えて。最後のオフの日は東京に遊びに行ったりしていたので、そういうふうに、「リフレッシュするときはリフレッシュして、練習はしっかり集中してやって、そういう段取りを心がけてやるように」と、こちらも気をつけていました。

―Q.決勝の試合内容を振り返って
1回、前回(2023年)の世界選手権決勝で対戦している選手ですので、対策してくるのはわかっていたんですけど、それに対して「つぐみが自分のレスリングができるかな」っていうところがポイントだった思うんですけど。終始、対策はされていたんですけど、「つぐみのペース」で、ずっと「つぐみの組み手」で試合を展開しながら、その中でも勇気を持ってタックルにも入って。

ポイントが入った場面は、全て相手にもチャンスがあるような“微妙な場面”だったんですけど、そこでもしっかりと練習の成果を発揮して、ポイントをつなげて、しっかり2点ずつ積み重ねていって、“つぐみらしく6分間しっかり戦った”一戦だったんじゃないかなと思います。

―Q.試合終了の瞬間は
最後の方は相手と6点差あったので、「このままいけるんじゃないか」っていう思いで、本当に、残り10秒を切ったあたりからは…「信じられない」というか、「夢じゃないんだろうか」っていうような感覚で、最後の瞬間を見守っていました。

―Q.決勝後、つぐみ選手と抱き合う姿が中継に映っていたが
決勝が終わった後、(育英大学の)柳川監督と私の所に来てくれて、まさに、抱き合った時に「よく頑張った、本当によく頑張った」と話して…。つぐみは涙を流していたような感じで、会話はできなかったんですけど、僕は「頑張ったね、おめでとう」っていう話をしました。

去年10月、世界選手権の金メダルを父に披露した櫻井選手。今回は、より重みのある“オリンピック金メダル”を父にかけることができた。

―Q.表彰台の一番上に立ったつぐみさんの姿は
表彰台の上に上がるときに「オリンピックチャンピオン」ってコールされて上がるんですけど、そのときはちょっと、「あぁ…」っていう、感慨深いものがありました。つぐみも、手を振ったり、うれしそうな表情を見せたりして、「君が代」が流れたときにはちょっと感慨深いような涙ぐむような表情をしてたので、「つぐみ自身も感動して、すごくうれしい気持ちになっているんだな」って、ちょっとホッとしたような思いにもなりました。

「ホっとした」と話す優史さん。娘の悲願達成に、父の表情も和やかだった。

ーQ.その後、つぐみさんとの会話は
家族がバラバラになって会場内で試合を観ていたので、表彰式が終わった後に1か所に集まって、家族が集まっているところに表彰式終わりでつぐみが来てくれて、つぐみはそこで涙を流して…。

一緒に写真を撮って、その後いろいろと、記者会見だったりドーピング検査だったりが終わって、会場の外へ出たところで、つぐみから金メダルをかけてもらって。そこで、いろいろと、家族で記念写真の撮影だったり、少し話をしたりしました。

―Q.つぐみさんから金メダルをかけてもらった感想は
いやぁ、やっぱり、重たいっすね(笑)。重たかったです。なんか、正直、あまり実感もないんですけど、やっぱり、うん…。欲しくてね、獲れるものではないので、本当に、オリンピックの金メダルをつぐみが手にすることができて、私もかけることができて、「本当によかったな」っていう思いになりました。

―Q.つぐみさんからはどんな言葉が
つぐみは、「その日のどんなことがあったか」や「表彰式の後にどんなことがあったか」っていうことを話をしてくれて、あとは、「明日1日、いろいろと取材が入る」っていうことで、「オリンピックで金メダルを取ったら、こんな感じで、こんなことがある」みたいなことを教えてくれました。

“指導者”として、“父親”として、常に娘たちを見守ってきた優史さん。

―Q.今大会のつぐみさんの戦いぶりは
オリンピックに臨むにあたって、やっぱり「そこが一番ポイントかな」と。「いつも通りのつぐみのレスリングができれば、結果もついてくる」と思っていましたが、初めてのオリンピックの舞台で「力がちゃんと発揮できるのか」っていうところがすごく心配だったんです。けど、1回戦はちょっと緊張もあったんですけど、それでも終始、「つぐみらしい戦い・普段のレスリングはできていたんじゃないかな」と。本当に、そのあたりは、もう「たいしたもんだな」と思います。

―Q.20年前(2004年)に「高知レスリングクラブ」を立ち上げ、ずっとつぐみさんと頑張ってきたが、いま思うことは
正直、ここまで来るとは思っていなかったので…。小学校のときに「オリンピックで金メダルを獲りたい」っていう夢を持ってですね、その夢を抱きながら、なかなか勝てない時期とか、うまくいかない時期もあったんですけど、ずっと諦めずに終始、夢に向けて頑張っていましたので、「その夢を実現してくれてよかったな」と思います。

つぐみ選手(左)と、男子65キロ級代表の清岡幸大郎選手(右)。ともに3歳の頃から優史さんのもとでレスリングを続けてきた“幼馴染”。

―Q.つぐみ選手と幼馴染の清岡幸太郎選手も男子65キロ級に出場
本当に、子どもたちのおかげで、「自分がやってきたことが間違っていなかった」っていうことを改めて感じることができました。きのう、きょうと、つぐみが戦っている姿を見て、本当に「子どもたちの可能性ってのはすごいな、本当にここまで成長するんだな」っていう、すごく感慨深いものがありました。

―Q.クラブ立ち上げから20年、優史さん自身の挫折もあったと思うが、今、あの時の自分にどんな言葉をかけたい
そうですね…「まぁ、自分を信じて頑張れよ」っていう感じですかね(笑)。

―Q.今後つぐみさんが高知に帰った時の話などは
まだ、今日あったことと「明日どんなことをするのか」っていうことを少し話したぐらいで…。つぐみも、記者会見があったり、ドーピング検査があったり、会場を出た後も記念写真の撮影をすごくせがまれて…っていうような状況もあって、「オリンピアン、金メダリストとしての大変な部分」も感じているようなこともあったので、ちょっと疲れているようなところもあって…。長くは話をしないようにして、もうすぐに(宿舎に)帰しました。

(次、高知に帰ってきたら)いつも行っているお店に連れて行ったり、好きな食べ物もあるので、食べさせてあげたり。(ここまでは)オリンピックを目指して、いろいろしんどい思いもしながらやってきて、疲れも溜まっていると思いますので、「少しゆっくりさせてやりたいな」と思っています。

―Q.高知県出身選手では92年ぶりの金メダル、高知県民や子どもたちに伝えたいことは
「92年ぶり」ということは、本当に、オリンピックで金メダルを獲るっていうことは難しいことです。ただ、無理なことではなくて、「難しいけれども、本当に夢を持って、本気で夢を諦めずに努力すれば、叶えることができる」ということを、私も、つぐみの頑張りを通して学ぶことができました。

本当に、高知県の子どもたちには「夢を大きく持ってもらいたいな」と思いますし、(競技力が低い)「高知県だから」といって「諦めることはもう全くない」と思うので、それぞれ、いろんな分野で頑張っている方々は、本当に、「夢や目標を大切にして、ぜひ頑張っていただけたらな」と思います。

つぐみ選手の“幼馴染”であり“最大のライバル”、清岡幸大郎選手も、優史さんが見守る五輪の舞台での躍動を誓う。

―Q.次は、教え子でもあり、つぐみさんの幼馴染でもある、清岡幸大郎選手の試合
そうですね、幸大郎も同じで、本当に「とにかく自分のレスリングをしっかり出してもらいたいな」と。オリンピックだからといって、特別にいろいろと考える必要はないので、「普段の、今の幸大郎のベストなパフォーマンス」「幸大郎のレスリング」を出してもらうこと。それを、もう1番に考えています。

きょうも、ちょっと本人と会って話をしたんですけど…。今、周りの日本のレスリングの選手がすごく活躍していて、そこについていろいろと思うところもあると思うんですけど、「オリンピックだからといって、今の状況も含めて気負い過ぎることなく、しっかりと、他の大会と同じように、1試合1試合、幸大郎らしく集中して頑張ってもらいたいな」と思います。

櫻井優史さんは、日本時間午後6時から始まる、男子65キロ級・清岡幸大郎選手の試合も、現地で見守ります。

鄭重声明:本文の著作権は原作者に帰属します。記事の転載は情報の伝達のみを目的としており、投資の助言を構成するものではありません。もし侵害行為があれば、すぐにご連絡ください。修正または削除いたします。ありがとうございます。