全国的で子どもが被害者となる性犯罪が後を絶ちません。こうした犯罪を未然に防ぐためにはどうしたらいいのか、取り組みの現状と課題について取材しました。

保育所の職員がわいせつ行為

2023年9月、宮城県気仙沼市立の保育所の職員だった男が女の子にわいせつな行為をしたとして逮捕される事件がありました。男は、不同意性交などの罪であわせて13回も起訴されていますが、2023年12月に開かれた初公判で元職員の男は「わいせつな行為をしようと思っていたわけではない」と起訴内容を否認しました。

子どもの頃の元職員を知る人:
「正直信じられなかった、そんなことをするような人とは思わなかったので」

元職員の男が繰り返していた卑劣な犯行に、子どもの頃を知る人は、このように話し驚きを隠しません。

子どもの頃の元職員を知る人:
「部活で優しく指導してもらったり、わからないところを教えてもらったり良心的で優しい人だなと思っていた。正直、衝撃が強すぎたので言葉が出ない」

増える子どもへの性犯罪

県内では2023年7月に仙台市の商業施設で未就学の女の子を体を触ったうえ連れ去ろうとする事件など、このところ子どもが被害に遭う性犯罪が相次いでいます。

全国で、未成年が不同意わいせつや不同意性交などで被害を受けた事件は、2023年が2403件で2021年以降は増える傾向にあります。

【子どもへの性犯罪事件(不同意わいせつと不同意性交)での検挙件数】
2024年 2403件
2023年 1938件
2022年 1848件
2021年 1801件

なぜこうした犯罪に及ぶのか、犯罪心理学などが専門の筑波大学、原田隆之教授は、「子どもに性加害を加える人の多くは、『ペドフィリア障害』という精神障害を持つ傾向にある」と話します。

ペドフィリア障害とは

筑波大学 原田隆之教授:
「子どもに対する性的な衝動や行動、非常に強い衝動があって、それが反復的になされる、つまり繰り返すことが『ペドフィリア障害』の診断基準になっている」

その上で原田教授は、子どもへの性犯罪を繰り返さないため、自身をコントロールできるようにすることが重要だと話します。

筑波大学 原田隆之教授:
「障害を治す、あるいはコントロールできる、そういう風に持って行かないと、同じような犯罪を繰り返す」

治療方法には、薬があるものの、止めれば効果もなくなります。そこで現在、主な治療というのが…。

筑波大学 原田隆之教授:
「認知行動療法という精神療法、心理療法で自分たちの性的問題をコントロールできるような治療を行う」

その認知行動療法を取り入れているのが、仙台保護観察所です。刑務所から仮釈放された人などを、社会で更生できるよう指導や支援を担っている国の機関です。

性加害者が持つ「都合の良い思い込み」

ここでは、性犯罪の加害者に対し、認知を修正することで不快な感情や問題行動を改善する「認知行動療法」を用いたプログラムを通して、再び性犯罪をしないための指導をしています。指導にあたるのは、心理学や教育学など幅広い専門知識のある保護観察官です。

仙台保護観察所 石坂真美首席保護観察官:
「特殊な考えかもしれないということを、できれば私から言うのではなく、その人に気づいてもらう」

以前、書店で女性に痴漢行為をしたことで、再犯防止のプログラムを受講することになった人は、自分に都合の良い思い込みがあったと話します。

仙台保護観察所 石坂真美首席保護観察官:
「(痴漢を受けた女性は)前は触られたくないと思って、体を前かがみにしたときに、その人(加害者)は『お尻を触ってほしいって言われた』と(勝手に)理解をした」

再犯防止のプログラムでは5回の受講でなぜ性犯罪を起こしてしまうか振り返らせ、認知の偏りを気づかせることにより、再犯に至らない方法を学ばせるのです。

仙台保護観察所 石坂真美首席保護観察官:
「子どもに対しては、『おれのこと好きなんじゃないか』と思った時に、『いや、そうじゃないんじゃないか。おれが怖くてああいう風に言ったのかもしれない』という風に考えるだとか、自分で考えてもらう」

実際、再犯防止プログラムの効果は表れているのでしょうか。

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