連日暑い日が続く中、災害が起きた場合、避難所は普段よりも過酷な状況となることが想定されています。障害のある子どもが避難した時に、どのような準備が必要なのか。様々な状況を想定した訓練を続けてきた子どもと、その関係者が再び集まりました。
7月25日。夏休みの福島県立平支援学校に、笠間理恩さん(13)がやって来ました。
心身に重い障害を持つ重症児の理恩さん。手足を動かすことや、言葉を伝えることができません。真夏に災害が起きたとき、障害のある子どもが避難所でどう過ごすのか。理恩さんのケアに関わる人たちおよそ20人が集まり、訓練が行われました。
理恩さんの母・笠間真紀さん「目的としては、避難した後の質の向上を目指して、前回は冬の寒さ対策、今回は夏の暑さ対策を多職種で検討していきたいと思います」
10分で体温急上昇 テント内の危険
訓練を企画した、理恩さんの母・真紀さん。理恩さんたちは、今年1月に、同じ場所で寒さ対策の訓練に臨みました。暖房を使った場合、避難所の発電機では、重症児の医療機器が2人分しかまかなえないことなどがわかりました。しかし、真紀さんたちは、冬よりも、夏の方が、過酷な避難になるかもしれないと考えています。
笠間真紀さん「あの子を育てていつも感じますけど、夏が一番気を付けます。やっぱり高体温になると、それを下げるのは至難の業ですし、脱水になるとひどい時は入院ですし…」
障害のある子どもは、体温の調整が難しく、停電などで冷房が使えない場合などは、常に脱水症状や熱中症への警戒が必要になります。避難所に用意された、テント。屋根が開いているので、開放的に見えますが、記者が実際に横になると…。
木田修作記者「結構暑いですね。全然空気が流れない感じがします」
空気の流れがまったくなく、どんどん暑さがこもるように感じます。
参加者「先生、37℃です」
理恩さんがテントに入っていたのは10分ほどでしたが、体温は急激に上昇しました。
参加者「理恩くんをテントに戻すのはやめましょう。ちょっと無理っぽいので」
真夏の避難所では、テントに入ることも危険が伴うことが確認されました。
頼り合える関係づくり「一緒に考えるきっかけに」
一方、窓がついたテントでは、空気が通るようになったものの、暑さについては、別の問題も残りました。
東北大 災害科学研究所・柴山明寛准教授「やっぱりシートの上が1℃以上、上ですね。悩ましいですね。悩ましいですね」
床ずれや関節が動きにくくなることを防ぐ、柔らかいマットやクッションのほか、移動に使うバギーは、熱がこもりやすくなります。
理恩さんの主治医・本田義信さん「寝ていると関節が拘縮しちゃう、バギーにいると体温が上がる。本当に繊細な管理が必要なんだなって。これで24時間過ごすのは至難の業というか、いまの時点では不可能かなと」
このほか、人工呼吸器のアラートや痰の吸引など、ケアに伴う音についても、周囲の理解が必要だといいます。
笠間真紀さん「障害児の生活音って、普段聞いたことのない音が多いと思うんですよ。私たちは日常になっているので、気がつかないことなんですけど」
過酷な状況の中、訓練をやり遂げた理恩さん。扇風機の風に、笑顔を見せました。
笠間真紀さん「気を遣って、気を遣われて、お互い気を遣うぐらいなら(障害児の親は)自分で何とかしようと思ってしまう。お互い頼ったり、頼られたりという関係が地域でできていけばいいなってすごく思ってて、障害児だから助けてもらいたいとか、障害児だから優先してもらいたいということではなくて、一緒に考えていくきっかけにしたいなと」
今回の訓練は医師や看護師も参加して行われましたが、参加者の中でも、体調を崩す人がいました。「数年前よりも格段に暑さの質が変わってきているのに、冬の寒さに比べて、夏の暑さの対策はまだ十分でない」という指摘もありました。暑さを念頭に置いた備えも必要となっています。
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