当時90歳の父親を本人の承諾を得たうえで絞殺したとして、「承諾殺人」の罪に問われている息子の裁判で、大阪地裁は息子に懲役3年、執行猶予4年(保護観察付)の有罪判決を言い渡しました。


▼「一緒に死んでくれるか」心中しようと考え…承諾得たうえで絞殺

 起訴状によりますと、理容師の王森浩嗣被告(61)は、今年5月、大阪市内にある自らが経営する理髪店で、父親(当時90)と心中しようと考え、父親の承諾を得たうえで登山用ロープで絞殺したとして、「承諾殺人」の罪に問われていました。

 被害者本人の“同意”がある殺人のうち、▽「嘱託殺人」は被害者本人が犯人に依頼したもの ▽「承諾殺人」は被害者本人が依頼したものではないが犯人に承諾を与えたもの という形で分類されます。いずれも法定刑は「6か月以上・7年以下の懲役または禁錮」となっています。

 これまでの裁判で王森被告は「間違いないです」と起訴内容を認めていました。


▼父親がパーキンソン病と診断 被告自身も頸椎の病気に苦しむ…

 検察側の冒頭陳述や証拠調べ(被告の供述調書など)、被告人質問によりますと、父親がバイパス手術を受けたことをきっかけに、10年あまり前から王森被告と父親は同居を開始。その後、父親はパーキンソン病とも診断されたうえ、被告自身も頸椎の病気によって手のしびれなどに苦しむようになり、理髪店を休業せざるを得なくなったということです。

絶望感を抱いた王森被告は自殺を考え、親族に父親を託すことにも申し訳なさを感じたため、心中を決意。事件当日、“マイナンバーカードの写真を撮る”という名目で父親を自宅から理髪店に連れ出します。

そして、“実は首の病気で苦しんでいる。一緒に死んでくれるか?”“薬と酒で眠くさせて、楽に逝かせてやるからな”とたずねると、父親は黙ってうなずいたといいます。

そして被告は日本酒と薬を飲ませ、父親の首を登山用ロープで絞めたということです。

しかし、被告自身は扉に取りつけたロープがほどけるなどして、死に至らなかったといいます。


▼「まさか今ここで生きているとは思っていませんでした」

 (今年7月の公判での被告人質問)
弁護人「今回の事件をどう思いますか?」
被告 「まさか今ここで生きているとは思っていませんでした。正直保釈されても生きるつもりはなかったです」
弁護人「どうして一足飛びに自殺を決意した?」
被告 「頸椎の手術はものすごく怖い。成功してもリハビリが長期間かかる。仕事どころか、まともな生活ができなくなると不安に駆られた」
「保釈されるまでは死ぬことばかり考えていた。しかし、親族にも『体を治して店を再建することを目指しなさい』と言われて…」
「今は多くの人に支えられて、店を再開することを目指して生きています」

王森被告は被告人質問で、“介護疲れによる犯行ではなく、単純に自分自身の苦しみ(頸椎の病気)から逃れるための犯行だった”という旨を強調しました。


▼検察側の求刑は懲役3年

 検察側は「犯行を決意した経緯は短絡的で、被害結果も極めて重大」として、懲役3年を求刑。一方、弁護側は執行猶予付きの判決を求めていました。

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