幹部自衛官への登竜門 100年以上続く伝統の遠泳訓練に密着

海上自衛隊幹部候補生
「いくぞ!1分隊!」「おーーーー」
「江田島の学び舎で~♪」

仲間と肩を組み大声で士気を高めるのは、海上自衛隊幹部候補生学校の学生たちです。この日、学生たちが挑んたのは遠泳訓練です。心身を鍛え団結力を深めるため、旧海軍兵学校時代から100年以上続いています。2024年春に防衛大学校や一般の大学などから入校した学生にとっては、幹部自衛官への登竜門といえる訓練です。

伊東大毅さん(防衛大出身)
「緊張よりワクワクの方が大きい。こんな長い距離を泳いだことがないので…」「苦手な学生も全員で泳げるように鼓舞していきたい」

佐藤綾夏さん(一般大学出身)
「意気込みは完泳することだけ」
Q、水泳は得意?不得意?
「得意ではない。入校したときは1mも平泳ぎで泳げなかったので教官や仲間に助けられて海で泳げるようになった。きょうはその成果を発揮して完泳したい」

「入校時は1mも泳げなかった…」女性自衛官の挑戦

伊東さんと佐藤さんの訓練班は、およそ15キロを泳ぎます。

訓練班
「入水始め」「前へ進め」

学生たちは2人1組のバディを組み、4列隊形で泳いでいきます。

海上自衛隊幹部候補生学校 岡本亮 総務課長
「一番のポイントは各グループが列を乱さないように、同じ速度で泳ぐことがポイント」
「約8時間泳ぐので体力を温存しながら泳ぐ必要がある。スピードの出る泳ぎ方だと早々に体力が尽きてしまうので、一番体力を維持しながら泳げる泳法が平泳ぎ」

泳ぎが得意な伊東さんは「水色」の帽子を被って、訓練班の先頭で仲間たちを引っ張ります。一方で、佐藤さんのように泳ぎに不安がある学生は「黄色」の帽子を着用して隊形の中に配置されています。

海上自衛隊幹部候補生学校 岡本亮 総務課長
「怖さを感じるのはすぐ底が見えなくなること。瀬戸内で透明度も高くないので泳ぎ始めたら10mくらいで底が見えなくなる」

泳ぎが苦手な学生はこの日に備えて4月からほぼ毎日、通常の訓練とは別にプールや海で泳ぐ練習を繰り返してきました。

海上自衛隊幹部候補生学校 岡本亮 総務課長
「ほぼ毎日訓練している。さすがに毎日訓練すると泳げない学生も泳げるようになる」

昼食も海の中で 束の間の休息に笑顔も

訓練開始からおよそ5時間。目標のポイントに予定通り到着しました。学生たちはこれから昼食をとります。

海上自衛隊幹部候補生学校 岡本亮 総務課長
「きょうの食事メニューを教えてください」
分隊長
「きょうのメニューは焼きおにぎりとウインナーと魚肉ソーセージと練乳です」
海上自衛隊幹部候補生学校 岡本亮 総務課長
「了解!」

学生たちは船や竹竿につかまって海に入ったまま食事をします。そのため水中で手に取っても崩れにくい食べ物が配られます。つかの間の休息で笑顔が見られます。

伊東大毅さん(防衛大出身)
Q、海の中で食べる昼食はどう?
「海水の塩辛さが相まってうまい」
「暑さと本番特有の雰囲気で結構きついけどあと1周なのでがんばります」

泳ぎが苦手な佐藤さんも明るい表情です。

佐藤綾夏さん(一般大学出身)
「大丈夫です。なんとかついていっている」

仲間たち
「佐藤、佐藤、佐藤」

ストレッチをする学生
「足はつっても日焼けは嫌」

猛烈な暑さに強い日差し… 過酷さ増す午後の訓練

昼休憩のあと、学生たちは再び泳ぎ始めました。気温は30℃を超えました。

海上自衛隊幹部候補生学校 岡本亮 総務課長
Q、船から投げ込まれてるのは?
「角砂糖や飴など。足などつらないように」

しかし、強い日差しや波によって学生たちの体力は次第に奪われていきます。

海上自衛隊幹部候補生学校 岡本亮 総務課長
「あ…つりましたね」

足がつった学生には浮き具が投げ込まれます。ボートで引っ張ってもらい少し休んで回復したら再び列に戻って泳ぎます。仲間が後ろから押して助け合います。

海上自衛隊幹部候補生学校 岡本亮 総務課長
Q、一生忘れられない?
「そうですね。幹部自衛官はこの遠泳を乗り越えなければなれないので…」
Q、今でも同期で集まるとこの訓練の話をする?
「この話は思い出したくない…」

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