しなの鉄道の観光列車「ろくもん」。
その「ろくもん」がこの夏、運行開始から10周年を迎えました。
信州の魅力がたっぷり詰まったこだわりの列車に乗り込み、人気の理由に迫りました。


軽井沢駅に入線する赤色の列車。

しなの鉄道が誇る観光列車、「ろくもん」です。

7月11日と12日に、運行の開始から10周年を記念した特別列車が走りました。


「ろくもん」の運行が始まったのは、今から10年前の、2014年7月11日。

「長野県の魅力が詰まった列車」をコンセプトに、全国各地で観光列車をデザインする水戸岡鋭治さんが手がけ、かつてない特別な観光列車として誕生しました。

軽井沢駅から長野駅の間を走る定期便は、土、日、祝日を中心に、年間およそ180日運行しています。

「ろくもん」という名前の由来。

それは、上田地域ゆかりの戦国武将、真田一族の家紋、「六文銭」です。

発車の前に、乗務員が吹く出陣の「ほら貝」が見どころの一つです。

この10年間での定期便の利用者は、およそ15万人。

県内外の観光客や鉄道ファンを中心に、多くの人たちに愛されてきました。

「ろくもん」の立ち上げに携わった、しなの鉄道の社員に誕生秘話を聞きました。

経営企画課 守屋芳典(もりや・よしのり)課長:
「(当時)輸送人員が(年間)1200万人から1000万人に、約200万人が減ったと。どういう風にカバーしていくかという営業戦略の中で、県外、インバウンドのお客さんを取り込もうという中で観光列車を導入しようという話に」

「ろくもん」の開発プロジェクトが始まったのは13年前の2011年。

開発を巡っては、水戸岡鋭治さんから大目玉を喰らったこともあったようです。



守屋課長:
「ものすごく真剣に取り組んでいただいて、うちも真剣に取り組んでいたが、やはり素人ですので、少し口を出したくなってしまう」
「水戸岡先生の地雷を踏んでしまったことも何回かあって、始発の新幹線で2日連続謝りに行った」

当初は、別の名前の候補もありました。

守屋課長:
「例えば軽井沢とか善光寺とかあったんですけど、偏ってしまう部分があるので、いろんなことを検討した結果、六文銭(ろくもん)になった」

目指したのは信州の魅力満載の、人とのふれあいができる列車でした。

守屋課長:
「日本で初めてのものを作ろうと、電車の中に障子のある個室を作った」

それでは列車の中へ。

3号車に並ぶ個室を仕切る障子には、県産のヒノキが使われ、柔らかく上品な雰囲気が漂います。


プライベート空間が確保され、ゆっくり車窓からの景色を楽しむことができます。

乗務員:
「浅間山は標高2568メートルございまして、山が2つ連なった形で車窓からご覧いただけます」

観光列車ならでは、専属の乗務員による丁寧なおもてなしが、こだわりの一つです。


1号車には子どもが遊べる、ボールプールに、ろくもんのグッズを販売するコーナーも。



そして、2号車には、一番のこだわりポイントがあります。

なんと、車内にキッチンがあるんです。

守屋課長:
「温めとか盛り付けをして最後の料理を提供する、ひと手間を加えられる場所にしようと。料理長が乗っている所が、キッチンのこだわり」


食事は、信州産の食材をふんだんに使った洋食の本格的なコース料理が提供され、信州ならではの食をたっぷりと味わうことができます。

乗客:
「お肉やわらかくておいしいですね」
「乗ってよかったです」
乗客:
「山並みがきれいで、緑が新鮮で、とても食事を楽しみながら、特別な感じがしてとても素晴らしと思います」

途中で停まる駅での、おもてなしも楽しみの一つ。

地元の飲食店などがホームでお土産を販売し、地域の温かさを実感できます。

更に、上田駅では・・・。

「太鼓」

この日は、信州上田おもてなし武将隊の真田幸村公がお出迎え。

武将隊:
「どちらからお越しで?」
乗客:
「江戸から」
武将隊:
「江戸からようこそ」


記念写真に納まり、共に10周年をお祝いしました。

武将隊:
「ろくもんが生まれた時からおもてなし、ろくもんと共に歩んでおり、これからも共に歩みたい」
「流行病、コロナがあった故、落ち込んだ客人たちが帰ってきて、これからより一層精進いたす!」



地元の食をゆっくり堪能しながら、列車に揺られること2時間余り。

リピーターの多さがその人気を裏づけます。

乗客:
「電車もかっこいいし、乗務員の方も親切でいつも楽しくさせてもらってます」
乗客:
「今度は長野から軽井沢に、別の機会に乗りたいなと思っています」

コロナ禍では利用客の減少などに伴い、苦しい経営を強いられたしなの鉄道。

乗り継ぎ割引の廃止や駅の無人化、減便を伴うダイヤ改正などを進め、2023年の業績は5年ぶりの黒字復活となりました。

土屋智則(つちや・とものり)社長:
「国内外を含めて、大勢来て乗っていただくことが、しなの鉄道の旅客数を全体として増やし、経営を安定させてくことに繋がる」


これまで取り組んできた地元ワインとのコラボレーションなど、今後も更なる観光誘客と、沿線地域の活性化にもつなげていくねらいです。

土屋社長:
「観光誘客だけでなく、観光地域づくりの一端を担うような地域の魅力の掘り起こし発信、そういった役割をしっかり果たしていくことが、これからの観光列車に求められているので、そんなことを考えながらと組んでいきたい」

特別感に加え、沿線地域の温かさも感じることのできる観光列車「ろくもん」。

これからも信州の魅力を伝えていきます。

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