東日本大震災から13年4か月経った今でも被災地の課題となっているのが、コミュニティづくりです。
岩手県大船渡市末崎町の住民が、みんなの「居場所」をつくりたいと運営する交流施設を取材しました。
7月20日、大船渡市末崎町の交流施設「ハネウェル居場所ハウス」で、毎月恒例の朝市が開かれました。
生花や焼き鳥、野菜などの販売のほか、包丁研ぎの出店などがあり、朝市は午前8時半のスタートから地域の住民でにぎわいます。
「店屋さんがなくて買いに行かれないから待ってたの、これね。居場所さんに来るやつ」
末崎町は公共交通の数や、店舗が少ないため車を持たない高齢者にとって朝市は大切な買い物の場になっています。
施設の中では飲み物片手におしゃべりする人たちの姿も見られます。
居場所ハウスをよく利用する人は…
「なんでって、やっぱ集まり処だからねえ。誰かかれか人いるからね。お話したりね、うん」
居場所ハウスは被災者だけでなく末崎町に住む人たちの交流を活発にしようとアメリカの企業の支援により東日本大震災の2年後に建てられました。
築60年の古民家を再利用したもので昔懐かしいたたずまいが訪れる人の心を癒やします。
居場所ハウスのある末崎町の平地区は高台のために東日本大震災の被害は受けず、188世帯が住んでいました。
震災後は住宅の自力再建や高台移転、災害公営住宅への入居などにより100世帯ほど増え、新たなコミュニティづくりが課題となってきました。
「南相馬のジャガイモいかがですか」
この日の朝市では福島県南相馬市のNPO法人らが視察を兼ねて地元で採れたジャガイモの販売をしていました。
福島第一原子力発電所の事故により避難を余儀なくされ、未だに一部で帰還困難区域が残る南相馬市でもコミュニティづくりが大きな課題となっています。
「にぎわいがすごいですよねー」
「わざわざ遠くから来るんじゃなくて地元民が参加していただく、これが一番の宝ですよね。いまのこのNPOと地元の関係が非常に良好だってのは一目瞭然わかるわけですよね。素晴らしいと思いますね」
震災で今までの住民構成が変わり、コミュニティの再生に取り組む当事者だからこそ、このにぎわいに価値を見出していました。
「一番おいしいのはね、カレーがおいしかった」「カレー」「カレーに入れるとね、イモが溶けたような形になってね」「あー、そうすか」
この居場所ハウスを運営するのが住民らで構成するNPO法人居場所創造プロジェクトです。
理事長を務める末崎町在住の鈴木軍平さんは、施設が開館して以来、理事長兼館長として住民たちの居場所づくりに取り組んできました。
「けっこうだんだん増えてきてるのね。なんだって一番はみんなで交わって触れ合いが深まればいいのかなと思ってるのね。それがなんぼでもいつもの生活のリズムになんぼでも貢献できればいいかなと思ってるんだけどす。それが一番だね」
この日は月に一度の「健康体操」の日です。
「この左右の体の癖なんかを感じながら」
30度を超える暑さのため体の負担が少ないようにストレッチを中心に住民たちが体を動かしていました。
教えるのは健康運動指導士で末崎町在住の熊谷侑希さんです。
「いろんな方に参加してもらって長生きできるように、そういったののお手伝いがしたいなと思ってます」
居場所ハウスではこのほか、歌声喫茶や手芸教室など月に10回以上のイベントを行い、住民たちが顔を出したくなる仕組みづくりをしています。
人が集まる仕組みはほかにも…
「ざるそば大盛と。あっちさ行ってくるから、俺」
2015年からスタートしたランチタイムのみの食堂の運営です。
「なんでもおいしいので、はい」「正直に語らいよ」「正直に語ってましたよ」「ああ、そうすか」「お安いし」
自分たちの農園の野菜を使った小鉢がすべてのメニューに付き、手ごろな価格が人気です。
住民の居場所を作るために奮闘してきた11年間。鈴木さんの思いはひとつです。
「やっぱなるたけいっぱい来てもらうのが一番いいですし、来てもらってここで楽しんでもらうと。楽しかったなと思えるような場所になってほしいなと思うね」
「まちに居場所を」ーーー居場所ハウスの取り組みはこれからも続いていきます。
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