各地でシカによる農作物被害が増えています。広島土砂災害の被災地で復興支援の酒づくりも、原料のコメを作る田んぼが荒らされ、ピンチです。

広島市安佐北区大林町桧山地区…10年前の広島土砂災害の被災地です。

5月中旬に行われた田植えです。グループ「ふるさと楽舎」は、6年前からここで休耕地を再生しながらコメを作っています。

馬場田真一リーダー「その活動の現場現場で楽しいだとか、誰かの役に立ったとか、そういった一つ一つの積み重ねが最終的にその復興につながっていくんかなって」

活動の柱が、「大林千年」という地域の酒造りです。自分たちが作ったコメを地元の酒蔵で酒にして、収益の一部を活動費にあてています。

その取組みがピンチです。原因は、田んぼを荒らすシカです。最初に目撃されたのは6月5日の夜でした。

メンバー 木村暢宏さん「某ロボット掃除機が歩いたように、頭がキレイにハハハ、食べられちゃって」

上下2か所の田んぼのうち、被害を受けたのは下の田んぼでした。いずれも苗の先が、かじられていました。調べたところ防護ネットと地面との間に隙間が見つかりました。メンバーはすぐに隙間を塞ぎましたが…。

その後も被害は続きました。

リーダーの馬場田さんは、シカの集団の中に知恵のある個体がいて、ネットに体当たりしては綻びや隙間を作って侵入したとみています。背景にはシカの急増があるようです。

馬場田リーダー「暖かい冬だったんで、シカが増えたんかなー、その死なずに越冬できた個体が子ども産んで今、子どもがすごく増えているタイミングなんで」

被害を受けた下の田んぼでは、ひょろひょろの苗がまばらに生えていました。

馬場田リーダー「上の田んぼと一緒に稲刈りしようと思ったら、この2枚たぶん全滅っていう言い方になるんじゃないかと思います」

収量は去年の半分程度に落ち込む見通しです。

仕掛けたワナにシカがかかりました。猟友会の駆除班員でもある馬場田さんは、田んぼの周りにワナを仕掛けています。シカの動きを研究したところ先月末から、ようやくかかり始めました。しかし馬場田さんは駆除では限界があると思っています。

馬場田リーダー「1匹倒したけん、被害がなくなるわけではないので」「こういうヤブとか少なくなればなる分だけシカが潜みにくくなる」「山作り里作りみたいなところに力入れにゃいけんのんかな」

シカが人里に下りて田畑を荒らす隠れ家が耕作放棄地のヤブです。馬場田さんは、一番の対策は耕作放棄地を減らすことと考えています。

そのための一つの取組みが始まりました。

メンバーの一人、広島大学4年の中村唯乃さんが耕作放棄地対策として企画したのが、モリンガの栽培です。インド原産で栄養価が高くお茶やサプリメントの原料になる植物です。

広島大生物生産学部4年 中村唯乃さん「耕作放棄地に手をつけるキッカケとして、このモリンガを入れて」「大林千年に次ぐ新しいシンボルではないですけど、第2のここのエリアを活性化できるものを作れたらなあっていうのかな」

ふるさと楽舎 木村暢宏さん「人が出入りするのはケモノ近づきにくくなるんで」「この地域が『モリンガいいらしいな』ってなったら、それはそれで面白いかな」

中村さんは、ふるさと楽舎の畑に試験的に苗を植えて、近く地域の人たちに説明会を開く計画です。酒づくりではピンチに立たされた若者たち…。試行錯誤しながら復興支援の取組みを続けます。

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